「ウチの弱さはいかんせん中途半端。DeNAばっかり“弱い”と注目を浴びてズルいですよ」

そうため息をもらすのは、今季のセ・リーグで開幕直後から横浜DeNAと熾烈な最下位争いを繰り広げてきた東京ヤクルトのファンたちだ。

どういうことか? 大のヤクルトファンとして知られるアルファブロガーのやまもといちろうさんに、その理由を聞いてみた。

「同じ弱小球団でも、DeNAのほうが話題性に富んでいるのは誰の目にも明らか。2球団の違いを象徴するように、よく“万人に愛されるDeNA中畑清監督”と“いぶし銀すぎて存在感に乏しいヤクルト小川淳司監督”が対比されますが、例えば3番打者を見比べても違いは出てるんですよ。派手に頑張るDeNAの梶谷隆幸に対して、地味に故障するヤクルトの川端慎吾のように、全体的に何をやっても薄いイメージが蔓延(まんえん)しているのが今のヤクルトなんです」

つまり、セ・リーグで下位争いを演じている同じ“弱いチーム”同士なのに、注目されるのはDeNAばかり……という嫉妬心がヤクルトファンにはあるらしいのだ。

事実DeNAは、いち早くニコニコ生放送でホームゲームの中継を始めたり、家族で楽しめるイベントを開催するなど、新規ファンを確実に取り込み、さらなる地域の密着化に成功している。5月初めの共同通信社の発表によると、横浜スタジアムの観客動員数は前年比23.6%増を記録。弱くても、ファンサービスは充実しているのだ。

さらに、補強面での差は歴然だ。

「DeNAは昨オフ、実績のある久保康友(前阪神)、高橋尚成(ひさのり)(前コロラド・ロッキーズ傘下)の両投手を獲得するなど補強も頑張っている。けれど、ヤクルトはエースの館山昌平ら故障者が続出しているのに、ファンが胸躍るような補強はなし。広島とDeNAの戦力が底上げされた分、今季のヤクルトは“相対的な暗黒度合い”が増している感があります」(やまもと氏)

野球解説者の江本孟紀(たけのり)氏が、DeNAとの違いをこう分析する。

「それでも対策を練ろうとしないのがヤクルトという球団の体質なんです。親会社はとりあえずプロ野球の球団を持っているだけで、別に勝っても負けてもいいという姿勢だし、チームは伝統的にファミリー感覚の仲良し球団で緊張感や危機感がない。DeNAも前までは同じ雰囲気だったけど、中畑が監督になってからいろいろと試行錯誤はしている。だからDeNAのほうが圧倒的に“変わる気配”はあるよね」

優勝争いとまでは言わないが、秋にCS出場権を争う位置にいれば、こうしたヤクルトファンのこじれた嫉妬心も消えてなくなるだろう。

(取材/昌谷大介、武松佑季[A4studio])

■週刊プレイボーイ23号「セ・リーグ争い【番外編】ヤクルトファンが6位・DeNAファンに嫉妬するワケ!」より