テレビ中継ではわからなかったかもしれないけど、日本のグループリーグ初戦、コートジボワール戦が行なわれたレシフェのアレナ・ペルナンブーコは、完全に日本のホームだった。遠く日本から多くのサポーターが来てくれただけでなく、ブラジル各地から大勢の日系人も応援に駆けつけていたんだ。

彼らはお互いに協力し、日の丸の入ったハチマキを大量に配ったりして、ほかのブラジル人観客を日本の応援に巻き込んだ。そんな頑張りもあって、応援では日本がコートジボワールを圧倒した。後半途中にドログバが出てきたときも、試合終盤にコートジボワールの選手が倒れて時間稼ぎをしたときも、大ブーイングが起こっていた。スタジアムにいたブラジル人観客のほとんどが、日本を応援していたと言っても言いすぎじゃない。素晴らしい雰囲気をつくってくれた彼らには、本当にありがとうと言いたいね。

それだけに、試合結果(1-2で敗戦)も内容も残念だった。

試合直後、僕はスタジアムのすぐ外でテレビの仕事があったんだけど、降りしきる雨の中、ずぶ濡れになりながら下を向いてホテルに帰るサポーターたちの姿を見て、2002年日韓W杯のトルコ戦(決勝トーナメント1回戦。0-1で敗戦)後の光景を思い出した。あのときも強い雨だった。選手やザッケローニ監督に見せたかったね。

確かに、コートジボワールは予想以上の強敵だったよ。戦術でも、個々の能力でも上回られ、日本は負けるべくして負けた。

でも、そういう強いチームを相手にしても、コンディションを整え、戦術を練り、なんとかして結果を出さなければいけないのがW杯という舞台だ。そして、今回の日本がそのW杯で一番重要な初戦に向けて100パーセントの準備ができていたかといえば疑問だ。

ザッケローニ監督のチグハグな采配

この4年間はなんだったのだろう。W杯を見据えてチームづくりを進めてきたはずなのに、メンバー選考からコンディション調整まで、何もかもがうまくいかなかったという印象だね。

主導権を握る攻撃的なサッカーをやると言っていたのに、フタを開ければ、パスミスだらけで、逆に相手に押し込まれてカウンター狙いの展開。コンディションもいいようには見えず、早くも前半終了間際には足が止まった。

ザッケローニ監督の采配もチグハグ。故障明けで90分間もたない長谷部のスタメン起用がその象徴だ。遠藤とリレーしてなんとか90分間。5人も6人も交代できる親善試合なら、別にそういう戦い方でも構わない。でも、W杯本番の交代枠は3人。しかも、レシフェは高温多湿で選手の消耗が激しい。貴重な交代枠をそんなふうに使っていては、チームとして最後までもたない。そして、最後はやったこともない吉田を前線に上げてのパワープレー。だったら、なぜほかの高さのある選手をメンバーに入れなかったのか。

やろうとしてきたサッカーでベストを尽くして負けたのなら諦めもつくけど、コートジボワール戦に関しては完全に消化不良だったね。

まだまだ日本サッカーは発展途上。準備とは何か、チャレンジするとはどういうことか、あまりにも高い授業料を払ってしまった。

(構成/渡辺達也)