どのチームも暑いなかでハードワークして、迫力のあるスペクタクルな攻撃を仕掛け、決めるべき人が決める。どちらが勝つか最後までわからない、手に汗握る試合も多い。あらためてW杯は最高の舞台だなと実感している。
それだけに、日本のふがいない戦いぶりが際立ってしまったね。開き直った3戦目のコロンビア戦はともかく、初戦のコートジボワール戦、2戦目のギリシャ戦ともに横パスだらけで気持ちも伝わってこない。ブラジル人の観客にも面白くない試合だなと思われていた。選手たちは口グセのように「自分たちのサッカー」と言っていたけど、結局、中身はその程度だったんだ。
1勝もできないままグループリーグ敗退。とにかく残念だよ。僕も最後まで日本の勝利を願っていたし、勝てないにしても、せめてもう少し意地を見せてほしかった。せっかく多くのサポーターが遠くブラジルまで応援に駆けつけてくれたのに、彼らは肩を落として帰ることになってしまった。
敗因はたくさんある。ただ、ひとつ言えるのは、みんなが考えているほど日本のサッカーは進歩していなかったということ。日本より相手が強かった。アジアはみんな弱い。それがはっきりしただけだ。
今となってはこの3試合だけを分析しても意味がない。この4年間を振り返って、何が問題だったのか、総合的に見直す必要がある。日本サッカー協会がその作業を行なわないまま責任逃れに奔走し、その間に新しい監督を決めて「Road to Russia 2018」と再スタートするようなら、また同じ4年間を繰り返すだけだよ。
名前だけで実質二軍の相手を国内に呼んで、6人も交代できる興行的な試合ばかり行ない、選手、監督、そしてファンに「日本は強い」と錯覚させる。そういう構造的な問題を考えないと、何も変わらない。サッカー協会は今度こそ時間をかけて、その作業を行なわなければいけない。
“ウソ”を重ねてきたメディアの責任
同じことはメディアにも言える。テレビは視聴率、新聞は売り上げを優先するあまり、真実を言ってこなかった。“海外組”というブランドをつくり、大して試合に出ていないのに、いかにもチームの主力として活躍しているように報道してきた。たくさんいる解説者も、サッカー協会や選手に嫌われたくないから、良かったところを必死に探してコメントする。おかしいよね。果たして、批判することを恐れるメディアに存在意義はあるのかな。
そういう状況だから、僕が“普通”の批評をするだけで、“辛口”と言われるんだ。正直に言えば、時々無力感に襲われるよ。例えば、今大会、ブラジルはグループリーグでメキシコに引き分けただけで、地元メディアにボロクソに叩かれていた。そういう厳しさがあるから強くなるのに。
もちろん、批判をするといっても、結果だけ見て外国人のザッケローニを批判するのは誰にでもできること。なぜ彼を監督にしたのか、なぜ彼に4年間も続投させたのかという議論をしていかなければいけない。
そういう意味では、今回の結果に対して監督にも選手にも責任はない。悪いのは、なんの策も講じてこなかったサッカー協会と、“ウソ”を重ねてきたメディアだ。もう何年も前から繰り返し言っていることだけど、取り巻く環境が変わらない限り、日本のサッカーに未来はないよ。
(構成/渡辺達也)