香川真司の所属するマンチェスター・ユナイテッド(マンU)が今年も不穏なスタート。

昨季はリーグ戦7位に終わり、19年ぶりにチャンピオンズリーグ(CL)出場権を失ったが、8月16日のプレミアリーグ開幕前の親善大会ギネス杯(米国)ではインテル、レアル・マドリード、リヴァプールなどと戦い、無敗で優勝。“勝ちグセ”を取り戻しつつあると思われたが、プレミアリーグ開幕戦で格下のスウォンジーにホームで苦杯……。実際、開幕前は

「オランダ人新監督のファン・ハール効果だね」

そう語っていたのは現地紙『デイリー・ミラー』のデイヴィッド・マクドネル記者だ。

「ファン・ハールの監督就任でマンUに活気が戻った。オランダ代表を率いて3位になったW杯終了後、彼は休暇も取らずにマンチェスター入りし、周囲を安心させた。とにかく、ビッグクラブの指揮官としてのオーラが、前任者のモイーズと大違いなんだ」(マクドネル記者)

早くも選手、ファン、メディアから、全面的な信頼を受けているとのことだったが……。

そのファン・ハールが「この目で見て確かめたい」「(放出する選手には)早めに伝える」と語っていたように、ギネス杯は選手の“選抜”の場でもあった。

昨季から去就が取り沙汰されている香川は全試合に出場したものの、本来のトップ下ではなくボランチでの出場だったり、途中出場だったりで、インパクトを残せたとは言い難い。

香川本人は大会後、マンU残留を希望する趣旨の発言をしているが、開幕戦でも出場機会はなく……。

「現状、香川はトップ下でマタに次ぐ2番手の存在。ただ、ギネス杯で全試合に起用されたことから見て、放出候補といわれるナニやザハよりは信頼を集めている。このままいけば放出はないと思うけど、ファン・ハールは中盤で攻撃を組み立てられる選手の補強を求めている。その選手と引き換えに……という可能性は残っているね」(マクドネル記者)

マンUが香川を“残留させるメリット”は?

実際、トップ下の補強候補として、英メディアではチリ代表のビダル(ユベントス)、トルコ代表のアルダ(アトレティコ・マドリード)らの名前が報じられているという。

ただ、もうひとつ、香川の去就に微妙な影響を与えている特別な事情がある。香川の入団以降、日本企業8社がマンUのスポンサーについたことだ。マンUには、出場機会がない香川を“残留させるメリット”もあるのだ。

「マンUで飼い殺しになるのが最悪のパターン」

そう心配するのは、サッカーライターの杉山茂樹氏だ。

「CLにも出場できないし、本来なら自ら出ていくべき。でも、そのためには推定20億円といわれる移籍金など、高いハードルがあります。さらに、トップ下しかできない香川を獲得する高いレベルのチームが本当にあるのか。よく噂の出るアトレティコ・マドリードなんて、トップ下というポジション自体がない布陣を採用していますから」

残ってもサブ。出るにも行き先がない。これでは今季も香川は八方ふさがりではないか!

一方、杉山氏はこうも話す。

「W杯でまったく活躍できなかった香川にとって、今は過去の自分を捨てるぐらいの意識改革が必要な時期。以前、ファン・ハールは『ひとつのポジションしかできない選手の優先順位は低い』と言っていました。トップ下にこだわっていたら、永久に2番手、3番手のサブで終わる。逆にいうと、個性の強いファン・ハールの下で、香川が意識を強制的に変えさせられる可能性もある。それはすごくいい勉強になります」

香川がトップ下以外のポジションでも活躍できるようになれば、日本代表にも大いにプラス。マンUを、そして香川を再生させるべく、ぜひともファン・ハール効果を期待したい!