W杯が終わって1ヵ月もたたないうちに、再びブラジルに行ってきた。安倍晋三首相のブラジル訪問に合わせて日本政府が開いた「感謝の集(つど)い」という会合に出席してきたんだ。
日本とブラジルは来年で外交関係を樹立して120周年。両国がサッカーを通じて、お互いに強い親近感を育んできたということで、日本と縁の深いブラジルの元サッカー選手が集まり、安倍首相と面会したんだ。
出席者はジーコ、ドゥンガ、サンパイオ、ビスマルク、アルシンド、オスカー、マリーニョ、そして僕。このメンバーがそろって顔を合わせる機会はそうそうない。同窓会のような感じで話が尽きず、前の晩は夜中の1時くらいまで盛り上がった。メディアの前では絶対に言えないようなバカ話もたくさんしたね。現地2泊という強行軍だったけど、行ったかいがあったよ。
もちろん、まじめなサッカー話もたくさんした。話題の中心はやっぱり、W杯で惨敗したブラジル代表。誰もが「7点も取られるなんて、あり得ない」と怒っていた。
特に、ブラジル代表の新監督に就任したドゥンガは「戦術どうこう以前にチームの規律に問題があった」とバッサリ。ほかのメンバーも指摘していたけど、ブラジル代表は監督のスコラリとテクニカルディレクターのパレイラが対立し、選手を仕切れず、チームがバラバラになっていたというんだ。
例えば、左サイドバックのマルセロは「欧州(の所属クラブ)では紅白戦をやらない」と言って、ブラジル代表でも紅白戦のプレーを拒否していたという。そんな選手のわがままがまかり通る状態だったというわけだ。
地元開催で浮ついていた選手たち
W杯本番でもマルセロは守備への切り替えが遅く、左サイドは相手に狙われていた。だけど、ベンチは彼を交代させない。ドゥンガが「あんな歩いているだけの選手はいらない」と怒れば、ジーコも「あんなに自分の裏をやられているのに歩いている。あれが代表選手か」とあきれていた。
また、地元開催ということで、選手たちが浮ついていた部分もあったようだ。スポンサーがPRのために選手を奪い合い、選手もそれに乗って、自分の好感度をアップしようとしていた。
象徴的だったのは、準決勝ドイツ戦の会場入りでの出来事。選手全員が、負傷離脱したネイマールへの応援メッセージの入った、ナイキ製の白いキャップをかぶって現れたんだ。目の前の試合に集中できていない証拠だよね。ドゥンガも「ロッカールームにスポンサーが出入りするとか、そういうことがあまりにも多すぎた」と嘆いていた。
そのドゥンガだけど、ブラジル代表の監督を務めるのは2度目。前回(2006年7月に就任し、10年南アフリカW杯準々決勝敗退後に辞任)は、常に厳しい批判にさらされていた。
でも、そのことについて聞くと、「セルジオ、ブラジルで批判されない監督はいないだろう」とヤル気満々。監督就任決定後、空港で見ず知らずの年配女性に「あなたが監督をやるのは反対よ」と言われたそうだけど、「数年後にあなたが言ったことは間違いだったと言われるように努力します」と答えたそうだ。さすがだよ。
10月には日本との対戦予定(14日、シンガポール開催)もある。ドゥンガ率いる新生ブラジル代表が、どんなメンバーで、どんなサッカーをするのか、今から楽しみだ。
(構成/渡辺達也)