突然、飛び込んできた「可夢偉、シート喪失」の一報……。一体、可夢偉に何が起こったのか? 何より鈴鹿で可夢偉の走りは見られるのか? 今回の騒動の背景から、彼が今置かれている状況を読み解く!

■ケータハムのシートを操る“地獄の歯医者”

今シーズン、唯一の日本人ドライバーとしてF1に参戦している小林可夢偉(かむい)がシート喪失の危機に陥っている! 可夢偉の所属するケータハムF1チームはF1第12戦のベルギーGPで突如、ドライバーを変更。可夢偉に代えて日本のスーパーフォーミュラなどで活躍するドイツ人ドライバーのアンドレ・ロッテラーを起用したのだ。

ベルギーGP開幕の前日まで自身のツイッターで抱負を語っていた可夢偉にとってはまさに寝耳に水だったらしく、「レースに出走しないことは、8月20日の水曜日に伝えられました。自分自身としては納得できない部分はありますが、今のチームの事情はよく理解しているので、今回は受け入れることにしました」と可夢偉。

「チームの事情」とは、深刻な資金不足に悩むケータハムチームが、持ち込みスポンサーを持たない可夢偉の代わりに、スポンサー持参金付きのドライバーを乗せたというコト。実際、今回のベルギーGP出場のため、ロッテラーは「ハイプ・エナジー」というスポンサーの資金を持ち込んだようだ。

しかも、これが「1戦限り」の話ならまだいい。心配なのは可夢偉自身が「今後のことについては引き続きチーム側と話をしていますが、現在お話しできることはありません。(中略)自分の気持ちだけで決まることではありませんが、日本のファンの前でレースができるよう最大限の努力をしています」というコメントを発表。シーズン後半戦はおろか、およそ1ヵ月後に迫った日本GP(10月5日決勝)出場すら危うい現状を示唆(しさ)しているのだ!

ケータハムを操る“地獄の歯医者”とは?

一体、可夢偉の身に何が起こっているのか? そこで、いつものように「週プレF1解説者」のタキ・イノウエ氏にお伺いを立ててみた。

ところが、「いやぁ、可夢偉クンについてはいろいろな話が聞こえてくるのですが、デリケートな問題なので今回はノーコメントで……(汗)」と、いつになく歯切れの悪いタキさん。

仕方なく、元F1ジャーナリストのK氏に聞くと、「F1はうかつに飛び込むと骨までしゃぶられる恐ろしい世界、別名“ピラニアクラブ”とも呼ばれています。可夢偉のケースもその典型的な例だと思いますね……」と言うのである。

「彼が今季所属するケータハムはF1界随一の弱小チーム。今年7月には経営危機に陥り、オーナーだったエアアジア創業者のトニー・フェルナンデス氏がチームを売却し、第10戦のドイツGP以降は、新たな経営陣の下で再出発しています。

ただし、問題はその新たな経営陣。名目上のチーム代表は元F1ドライバーのオランダ人、クリスチャン・アルバース氏が務めているのですが、実際にチームを操っているのは今回の買収劇をまとめた張本人でもあるDr.コリン・コレス。F1でその名を知らぬ者はいないクセ者で、僕は“地獄の歯医者”と呼んでいます」(K氏)。

エエッ? なんですか、ソレ?

■可夢偉のシートを公然と「商品化」?

「コレスはドイツとルーマニアの国籍を持つ正真正銘の歯科医なのですが、2005年にミッドランドF1チームのマネージングディレクターとしてF1界に参入。その後、スパイカーF1、フォース・インディアなどのチーム運営に関わり、最近では11年に経営破綻したHRTのチーム代表を務めていた人物です。

今回のように弱小チームのシートを持参金付きのドライバーに『切り売り』して資金をかき集め、その後、ポイっと使い捨てにするのはコレスの十八番(おはこ)です。

鈴鹿で走れない可能性も?

また、08年に『スーパーアグリF1』が経営破綻した前年にも、スーパーアグリのマシンが規定違反だと執拗(しつよう)に訴えてチーム崩壊の一因をつくったのがコレス。当時、彼が『アグリを地獄に突き落としてやる……』と公言しているのを直接聞いたこともあります。

ちなみに、歯医者としての腕は確からしいのですが、最近ではメルセデスF1の幹部が上層部の悪口を言っているのをパドックで『盗み録り』して恐喝するなど、油断していると“歯”まで全部抜かれてしまいかねません(汗)。

ロッテラーのベルギーGP参戦も水面下ではかなり前から進んでいたようですし、今後、カルロス・サインツJr.や、ロベルト・メリといったスペインの若手ドライバーが可夢偉に代わってケータハムをドライブするという噂も出ています。

こうして可夢偉のシートを公然と『商品化』することで、『おい、スズカに出たかったら金持ってこいや!』と、可夢偉や『可夢偉応援席』を販売している鈴鹿サーキット、フジテレビなどにジワジワとプレッシャーをかけるつもりでしょう」(K氏)

仮に可夢偉が「持参金」を用意できなければ、鈴鹿で走れない可能性もあるのだろうか?

「うーん、現状ではなんとも言えませんね。史上最高の日本人ドライバーである可夢偉に対して、日本の企業がこうも冷淡な状況では、簡単にスポンサーを見つけられるとは思えません。一方のコレスは鈴鹿の直前まで脅しをかけてくるでしょう。

最後の望みはF1界のドン、バーニー・エクレストンが日本GPの集客を考慮して、『鈴鹿で可夢偉を乗せろ』と鶴のひと声を発してくれるコトでしょうか? ただ、ケータハムの新オーナーが、実はバーニーだという噂もあるんでねぇ」(K氏)

うーん、マジで怖いぞ、F1の裏舞台(汗)。次戦イタリアGPでは、いったい誰がケータハムのステアリングを握っているのやら?

がんばれカムイ、負けるなカムイ! 鈴鹿でキミの雄姿を見られることを、多くの日本人ファンとともに、この週プレも心から祈っているぞぉ!(汗)