アギーレ監督体制となってから初の親善試合に臨んでいるサッカー日本代表。そのメンバーには坂井達弥(鳥栖・23歳)、松原健(新潟・21歳)、森岡亮太(神戸・23歳)、皆川佑介(広島・22歳)、武藤嘉紀(FC東京・22歳)という5人の若き初招集選手が名を連ねた。

ただ、失礼ながら、いずれも代表選出されるまでは全国区の知名度がなかったプレーヤーばかり。一体、彼らはどんな個性を持っているのだろうか。

一般紙の代表番記者のA氏が解説してくれた。

「坂井はJリーグでは珍しい左利きのセンターバックです。しかし、まだプロ2年目で、今季はリーグ戦5試合しか出場していません。松原は5人の中で唯一のリオデジャネイロ五輪世代ながら、新潟では不動の右サイドバック。森岡はすでにプロキャリア5年目で、自在なスルーパスが持ち味の司令塔。クラブでも今回の代表でも10番を背負っています。

ルーキーの皆川は186cmと長身のセンターフォワードですが、今季のリーグ戦出場はまだ8試合。現役慶大生の武藤は今年FC東京入りし、ここまでチーム最多の8得点をマーク。スピードがあり、パスも出せばタメもつくれるという万能型のアタッカーです」

いずれも何か光るものを持った選手のようだが、大なり小なりサプライズ選出であったことは確か。なぜアギーレは、彼らをピックアップしたのだろう。

共通点は今、好調な選手

サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏はこう語る。

「彼らに共通しているのは、まさに今、好調な選手であること。アギーレが視察、あるいは映像で確認した直近の試合で目につくプレーを披露したので、どれほどの力量なのかをしっかり確認してみたいと、自らの意思で選んだのでしょう」

つまり、すでに代表にふさわしいレベルにあるからではなく、期待値込みの選出だったというわけだ。

「だから、代表合宿や5日のウルグアイ戦、9日のベネズエラ戦で、アギーレの眼鏡にかなうプレーを彼らができなければ、10月のジャマイカ戦、ブラジル戦では別の初招集組とごっそり入れ替えられてしまうかもしれません。今は勢いがあっても、確固とした実力を証明してきた選手たちではありませんからね」(後藤氏)

では、今回の5人で最も将来性のありそうなプレーヤーを挙げるとすると?

「森岡はJリーグで場数を踏んでいるので、この先もパフォーマンスが大崩れすることはないという意味では、一番計算が立ちます。ただ、彼のポジションには、似たようなタイプのライバルが多いですからね……」(前出・A氏)

「私が初選出組の中で実際にプレーを見ているのは松原、森岡、武藤の3人なのですが、そのなかであえてひとりを選べということなら、松原でしょうか。オーバーラップのタイミングがいいだけでなく、キックのフォームが非常に素直なので、これからもっと多彩な蹴り方を覚えて、プレーのバリエーションを増やせる可能性を感じます。

蹴り方や走り方に変なクセのある選手は、習得できるプレーが限られてしまうもの。彼はその逆で、これからどんな色でものる、白いキャンバスみたいな好素材だと思います」(後藤氏)

9月の“初招集トライアル”を突破できるのは、果たして誰なのか。