山岸舞彩が、「チームジャパン」を支える早川賢一キャプテン、前田美順キャプテンに迫る!

今、日本のバドミントン界が猛烈に熱い。5月に行なわれた“バドミントンのワールドカップ”ともいえる国・地域別対抗世界大会で、女子チームが33年ぶりに決勝に進出。男子チームに至っては大会5連覇中の絶対王者・中国代表を準決勝で退け、史上初の世界制覇を成し遂げた。

8月の世界選手権でも女子3選手がメダル獲得。今まさに充実の時を迎えつつある「チームジャパン」を支えるのは、対照的なふたりのキャプテンだった――。

NEWS ZEROキャスターの山岸舞彩がトップアスリートに独占インタビューを敢行していくシリーズ「挑戦者たち」。第4弾は、バドミントンの早川賢一キャプテンと前田美順(みゆき)キャプテンに迫る!

■背中で語る主将とギャグを言う主将

山岸 少し時間がたちましたが、5月の男子チームのトマス杯(注1)優勝と女子チームのユーバー杯(注2)準優勝、おめでとうございます。

*注1 トマス杯 男子バドミントンの国・地域団体別対抗戦。現在は2年に1度開催され、一度の対戦でシングルス3試合、ダブルス2試合が行なわれ、3勝したチームの勝利となる

*注2 ユーバー杯 女子バドミントンの国別対抗戦。男子のトマス杯に相当する

早川前田 ありがとうございます。

山岸 男女ともに世界大会で好成績を挙げられたということで、今回はそれぞれのチームのキャプテンであるおふたりに来ていただきました。特に男子は、準決勝で大会5連覇中だった絶対王者中国を、そして決勝では世界ランキング1位(男子シングル)のリー・チョン・ウェイ選手を擁するマレーシアを破っての初優勝。これはもう快挙中の快挙といって差し支えないと思うのですが、早川選手としてはどのあたりに勝因があったとお考えですか?

早川 やっぱり監督、朴(柱奉)(パク・ジュボン)さん(注3)が日本に来られて今年でちょうど丸10年で、彼が育ててきた選手たちが今、ようやく世界で戦える自信を持ててきたことが大きいかなと思います。

*注3 朴さん 1964年生まれ、韓国出身の元バドミントン選手。1980年代から1990年代にダブルスの選手として活躍。現役引退後は韓国、マレーシア、イングランドなどで指導者としてのキャリアを積み、2004年11月からは日本代表チームのヘッドコーチとして指揮を執っている

日本のチーム力が勝因

山岸 やはり監督が代わるとかなり違うものですか?

早川 最初の頃の日本代表は弱くて、「大会に出られればいいかな」くらいの気持ちだったんですけど、朴さんは「日本にも世界と対等に戦える選手がいるんだ」ってずっと言い続けてきてくれて、特に意識の部分がすごく変わったというか。

山岸 朴監督は男女両方のチームの指導をされていますが、前田選手としては男子チームの初優勝をどのようにご覧になっていたのですか?

前田 男子と女子で決勝の日が1日ずれていたので、当日はみんなでスタンドから応援していました。女子は決勝で中国に負けてしまった準優勝後の応援だったので、よけいに力が入りました。だから、男子が勝って日の丸が揚がった瞬間は、もう本当に鳥肌がすごくて。

山岸 チームの雰囲気は、大会中は特別良かったのですか?

早川 結構いつもどおりでしたね。みんなでワイワイやっていて、準決勝の中国戦の前のときだけ、ひと泡吹かせてやろうというか、「とりあえず誰か勝ってやろうぜ」みたいな話はしました。

山岸 ということは、3-0という結果は予想していなかった?

早川 思わなかったですね。中国チームはトマス杯で10年前から一度も負けていなかったわけですから。でもマレーシアとの決勝では女子のみんなも応援してくれて、もう本当に日本チームが一体になれていたこと……日本のチーム力が勝因だったと思います。男子だけだったら負けていたかもしれない。応援もものすごく盛り上がっていて、結構押せ押せというか、イケイケというか、チャラいというか(笑)。

山岸 チャラい!?

早川 もう大学生のノリみたいな感じで応援してたので。

山岸 そういう一体感というのを、それぞれのチームのキャプテンであるおふたりがつくってこられたんですね。先ほど撮影させていただいたときに思ったんですけど、おふたりは仲がいいですね?

両キャプテンのキャラは?

早川 (即答で)そうですね!

前田 悪くはないです(笑)。

山岸 早川キャプテンは、前田キャプテンから見たらどんなキャラクターなんですか?

前田 おもしろいです。

山岸 そういう感じですか。

早川 ちょっとちょっと、本人の前でそういうのやめてもらっていいですか?

前田 すごくおもしろいです。

山岸 どうおもしろいですか?

前田 元気だし、盛り上げてくれるし、ムードメーカー的な。

早川 キャプテンですから。

山岸 あ、今ドヤって顔した。では、早川キャプテンから見た前田キャプテンはどうですか?

早川 なんていうか……ストイックで、後輩を何も言わずに引き連れていくようなオーラを持っています。

前田 ええーっ、そうかなあ。

早川 練習とかも、「やれよ」って言うんじゃなくて、やっている姿を見せて後輩をその気にさせる感じ。

山岸 おおー。背中を見せて育てる、的な。

早川選手がキャプテンになったのは消去法?

早川 そうそう。あまり多くを言わないというか。

前田 言えないんですよね。あんまり下のコに。アドバイスもしてあげられないから、自然とそういう形になるのかも。

早川 でも慕われてるし、尊敬されてます。だって、ギャグ言わないじゃないですか、俺みたいに。

前田 言わない。

山岸 私、ギャグを言うキャプテンってあまり見たことないんですけど(笑)。キャプテンっていうとなんかこう、バシッとしているイメージですよね。

早川 そうですね。だからあまり向いてないんです。選ばれたのも消去法なんですよ。

山岸 ええっ!?

早川 上から見ていって、「おまえ違う、おまえ違う、あ、おまえかな、おまえでいいや」みたいな感じで。

前田 確かに、早川に決まったときは、あ、そこにいったんだと思いましたね。

山岸 意外な人選だったんですか?

前田 上の先輩がいたので。向いてないことはないと思ったんですけど。

山岸 どういう意図があったんですかね?

早川 わからないです。僕、所属チームでもキャプテンじゃないんですよ。なのに代表ではやっているという。小、中、高、大学はずっとキャプテンだったんですけど、社会人になってイジられキャラが定着してから、キャプテンというカテゴリーには含まれなくなったんです。

代表でやることになったときも、最初は冗談で「俺、やっぱキャプテンっすか」みたいなこと言ってたんですけど、いざ本当にやることになってヤッバ~ってなりましたもん。指名されたとき、手汗とかマジでヤバかった。

お弁当の注文もキャプテンの仕事

山岸 チームの雰囲気づくりという点以外で、キャプテンとしてどういう仕事を?

早川 いや~、選手のみんなのお弁当を注文したりですね。

山岸 えっ、待って待って、冗談ですよね? えっ、大事?

前田 大事です。

山岸 へえ~、それ、キャプテンの仕事なんですね。すごい。

早川 本当は違うのかもしれないけど、練習のこととかも含め、キャプテンってコーチ陣と選手の間に立つ役割も担うじゃないですか。だから、誰かにやらせるよりも自分でやったほうが早いこともあるんですよね。それで各部屋に全部電話して「何弁当、いる?」とか、うわ、面倒くせ!って思いながらやってます。前田さんもそうですよね?

前田 私はLINEのグループをつくってるから、そこまではやってない(笑)。

*この続きは、発売中の「週刊プレイボーイ39号」にて掲載!

●早川賢一(はやかわ・けんいち)1986年4月5日生まれ、滋賀県出身。身長177cm、体重79kg。利き腕:右 日本ユニシス実業団バドミントン部所属。2006年の世界学生選手権でダブルス部門3位入賞を果たし、以後、2007年のルーマニアインターナショナル、オーストラリアインターナショナルや2010 年のオーストラリアオープンでダブルス優勝、2013年、2014年の全英オープンで2年連続となる準優勝を果たすなど、ダブルスの名手として多くの国際大会で好成績を残す。今年5月に開催されたトマス杯では同じく日本ユニシス所属の遠藤大由とペアを組み、同大会初優勝に貢献。現在、日本代表男子チームのキャプテンを務め、明るいキャラクターでチームをもり立てる。世界ランキング男子ダブルス3位

●前田美順(まえだ・みゆき)1985年10月14日生まれ、鹿児島県出身。身長169cm。利き腕:右 ルネサスセミコンダクタ マニュファクチュアリングバドミントン部所属。2008年に北京五輪の日本代表に選出され、当時実業団でもチームメイトだった末綱聡子との“スエマエ”ペアでアテネ五輪金メダルペアを破り日本バドミントン界史上初となるベスト4に進出。その後も2010年デンマークオープン、2011年、2013年のインドオープンでダブルス優勝を果たす。また、混合ダブルスでは2005年から2010年に全日本総合選手権大会で6連覇を達成。現在は日本代表女子チームのキャプテンを務め、8月の世界選手権では垣岩令佳とのペアで銅メダルを獲得した。世界ランキング女子ダブルス7位

■山岸舞彩(やまぎし・まい)1987年2月9日生まれ、東京都出身。趣味:ゴルフ、特技:書道。キャスター事務所セント・フォース所属のフリーキャスター。2009年4月から2011年3月まで『J リーグタイム』(NHKBS1)のキャスターを担当。2011年4月から2013年3月まで、NHK総合テレビの週末のスポーツニュース・情報番組『サタデースポーツ』『サンデースポーツ』のメインキャスターを担当。2012年にはNHKロンドンオリンピック放送の現地キャスターにも起用された。現在は『NEWS ZERO』(日本テレビ系)に、月曜~木曜のレギュラーキャスターとして出演中

(スタイリング/松井英樹[山岸] ヘア&メイク/井生香菜子[前田、山岸] 衣装協力/kate spade new york[ケイト・スペード ニューヨーク]kate spade japan[ケイト・スペード ジャパン]TEL03-5772-0326)