Jリーグも残り10試合を切って、いよいよ終盤戦に突入している。

ここ数年、優勝争いは上位数チームが最後の最後までもつれるだんご状態が続いていたけど、今季は早くも浦和が一歩抜け出した。

毎年のように優勝候補に挙げられながら期待を裏切ってきた浦和。圧倒的な強さを誇った2006年のリーグ優勝も、もう遠い昔の話に思える。

でも、今季は日本代表のGK西川が加入し、弱点の守備が劇的に改善。そして、柏木を中心とした攻撃陣は、絶対的なストライカーはいないものの、各選手が満遍なく得点を奪っている。攻守のバランスが非常にいいね。

浦和とともに優勝を争うだろうとみられていたライバルの川崎、鹿島が下位チームに相次いで取りこぼしているのも大きい。また、浦和の10月の対戦相手は徳島、仙台、甲府といった下位チームばかり。すでに天皇杯もナビスコ杯も敗退していて、リーグ戦一本に集中できるのも有利に働くだろう。

そろそろ優勝へのプレッシャーを感じ始めているかもしれないけど、阿部、興梠(こうろき)、西川など優勝経験者も多く、今季は絶好のチャンスだ。

今までの浦和といえば、タレントは豊富なのに、大事な一戦を取りこぼしたり、勝ち切れなかったり、どこかひ弱なイメージがあった。また、選手がサポーターの声援を逆にプレッシャーに感じてギクシャクしたり、対戦相手が「浦和のサポーターを黙らせてやる」と気合いが入って、実力以上のパフォーマンスを見せたりする。それが悪い意味での“浦和らしさ”で、今季もそういう懸念がないわけではない。

それでも、今季は浦和が逃げ切ると思うし、Jリーグの将来を考えたら、人気クラブの浦和にそろそろ優勝してほしいんだ。

ライバルチームからの引き抜きなんて当たり前のこと

日本代表と違って、最近のJリーグはメディアで大きく取り上げられる機会がなかなかない。今季も人種差別問題など、ネガティブな話題でばかり目立ってしまうなど、プロスポーツとしては厳しい状況が続いている。だから、「おっ、Jリーグもけっこう盛り上がってるな」と気づいてもらうことが大事なんだ。今その役割を担えるクラブは浦和くらいだろう。

また、今のJリーグは、大半のクラブが「健全経営」を理由に、補強費をケチっている。それは浦和も同様で、以前のエメルソン、ワシントン、ポンテのような大物外国人選手はいなくなった。ただ、それでも、日本代表クラスの選手を毎年獲得する努力をしてきた。そこは評価したいんだ。

ここ数年、柏木、槙野、森脇、西川、李、さらにはペトロヴィッチ監督と次々に広島(元広島含む)から獲得したことで、一部では、「(サンフレッチェ広島と浦和レッズを足して)“サンフレッズ”」と揶揄(やゆ)されていると聞く。

でも、僕に言わせればライバルチームの選手を引き抜いて、自分たちをレベルアップさせるなんて、プロとして当たり前のこと。何も問題はないし、批判は負け惜しみ。必要なら、浦和はもっと引き抜けばいいんだ。

今の浦和のメンバーの年齢構成や、外国人枠が空いていることを考えれば、来年、再来年とアジアチャンピオンズリーグでも勝負できるようなチームになる可能性も十分ある。

ぜひ今季優勝を果たし、かつてのような勢いを取り戻して、Jリーグを牽引(けんいん)する存在になってほしいね。

(構成/渡辺達也)