誰もが予想しなかった日本シリーズ進出だ。
昨年までの阪神のクライマックスシリーズ(CS)の通算成績は1勝8敗。CS導入以前も、2005年日本シリーズで4タテを食らうなどポストシーズンでの勝負弱さは際立っていた。
なのに、レギュラーシーズン優勝の巨人にまさかの4連勝! そして現在、パ・リーグ覇者のソフトバンクと熱戦を繰り広げている。
実に29年ぶりの日本一を視界にとらえ、関西は盛り上がりまくりか…と思いきや、ちょっぴり様子がおかしい。
まずは毎年シーズン開幕と同時に「優勝までマジック144」という“日本一早い優勝マジック点灯ボード”を掲げる尼崎(あまがさき)中央商店街(兵庫県尼崎市)。ところが、日本シリーズ進出を祝う看板や垂れ幕などがほとんど見当たらないのだ。
同商店街振興組合の寺井利一理事長はこう話す。
「夏場まではリーグ優勝も十分あると、夏のセールを中止にし、シーズン後の阪神優勝セールに備えていたんです。ところが、秋になってチームは大失速。もう優勝はないだろうと、普通の『阪神応援セール』の準備に切り替えてしまった。CS出場が決まってからも、過去のポストシーズンの成績から見て、日本シリーズ進出はまずないだろうと、なんの準備もしていませんでした。なのに、巨人にまさかの4連勝。本当なら、ここで商店街を挙げて『目指せ、日本一セール!』という巨大ボードでも出したいところでしたが、急には準備が間に合わない。悔しいです」
勝つと思わせては大負けし、負けると信じ込ませては快勝する、気まぐれな阪神にすっかり翻弄(ほんろう)されている様子だ。寺井理事長はこうコボす。
「こんなに予測を裏切る球団はない。裏切られるたびに商店街はあたふたさせられているんです(苦笑)」
阪神百貨店、電鉄まで慌てふためき…
実は、身内である阪神百貨店もCS突破セールを計画していなかった。ある虎ファンが怒る。
「CS突破のセールをやっているだろうと阪神百貨店に駆けつけたのに、何もやっていなかった。そごう神戸店では3日間セールをやっていたのに、なんで本家の阪神百貨店がなんもやらへんねん!」
その理由を阪神百貨店に聞くと、「CSはリーグ優勝とかとは違いますので、当初からセールなどの予定はなかったんです」(阪神百貨店・広報)とのこと。
ホンマ!? 阪神が巨人に勝つなんて、はなから想定していなかったのでは(笑)。
親会社の阪神電鉄もドタバタ。阪神電車の某駅構内にある立ち食いうどん店のおばちゃん店員がこう明かす。
「ウチの本社に阪神電鉄さんから『もし阪神が日本一になったら、何かサービスできるか?』って問い合わせがあったばかりや。うどんは単価が安いから、これ以上安く売れるもんはないと返事したらしいけど」
どうやら阪神電鉄は、阪神の日本シリーズ進出に慌てふためき、あちこちにセールの打診をしまくっているらしい。
虎ファンが集まる大阪市北区の喫茶店「まる虎(こ)ぽーろ」の盛林文男マスターが苦笑する。
「2位に13ゲーム差をつけて首位を独走していた08年も、終盤に大失速してリーグV逸。ファンが期待していると、スコーンとコケるチームが阪神なんです。だから、ウチでは優勝イベントはまだ企画していません。日本シリーズで阪神が2勝したら、ぼちぼち検討してみようかなと」
阪神とファンの命運は?
(取材/ボールルーム)