欧州各国リーグの開幕から約2ヵ月、ともに今季の巻き返しを期待されていた本田(ACミラン)と香川(ドルトムント)が明暗を分けているね。

昨季、新天地ACミランで不調だった本田は、開幕からゴールを積み重ねている。FKの場面でキッカー役を頑として譲らずに直接ゴールを決めた試合があったけど、彼の日本人らしからぬずぶとさが、いい方向に出ているようだ。新監督、チームメイトからの信頼も厚く、以前は辛辣(しんらつ)な批判を浴びせていた現地メディアからも称賛を受けている。

かく言う僕も、本田には厳しい評論をしてきたけど、今の彼の活躍は素直に認めたいし、うれしいこと。今後も、悪いときにはしかるべき指摘や批判をするつもりだし、いいときはしっかり褒めたいね。

ただ、本田について言えば、手放しで絶賛するのはまだ早い。ユベントスやローマなど上位チームとの対戦でもゴールを奪えるか。そして、シーズン最後まで継続性のあるプレーをできるか。本人も当然わかっていると思うけど、彼の真価が問われるのはこれからだよ。

一方の香川は苦戦している。古巣ドルトムントへの復帰は、僕もいい選択だと思っていたんだけど、なかなか難しいね。チーム状況が予想以上に悪かった。かつて香川が輝いていたときの強いドルトムントではない。低迷するチームにあって、香川自身も調子を戻せずにいる。本田のようにずぶとい性格ではないし、復活にはまだまだ時間がかかりそう。このままチームが低迷を続ければ、批判の矛先がいつ彼に向いてもおかしくない。

その香川に限らず、今季は本田以外の欧州組がそろって厳しい状況にある。

このままではアジア杯は本当に危ない

インテルの長友はここ2、3年、ずっとレギュラーとして頑張ってきたけど、最近は小さなケガやコンディション不良が目立つようになってきた。サイズが小さく(身長170cm)、フィジカルと運動量が生命線となる選手だけに、ちょっと心配だね。

そのほかでは、岡崎(マインツ)が相変わらず頑張っているけど、さすがに開幕からのゴールラッシュは止まってしまった。ドイツにいるほかの日本人選手も、いずれも目立った活躍をできていない。また、これまで不動のレギュラーだった川島(スタンダール・リエージュ)がベンチ外になったのをはじめ、吉田(サウサンプトン)、柿谷(バーゼル)、ハーフナー(コルドバ)、田中(スポルティング・リスボン)らは定位置をつかめていない。

これが今の日本サッカーの現実と言ってしまえばそのとおりなんだけど、2ヵ月後に開幕が迫ったアジア杯(オーストラリア)を考えると、さすがに心配になってくる。

このコラムでは何度も言っているように、僕はたとえ欧州組だろうと、所属クラブで試合に出ていない選手を代表に呼ぶのは反対。だったら、Jリーグでアピールしている選手をどんどん試すべきだと思っている。

ただ、困ったことに、今のJリーグを見渡しても欧州組を押しのけてレギュラーの座を奪えそうな選手は見当たらない。代表に呼ばれて当然と思わせるプレーをしているのは、G大阪を牽引(けんいん)する宇佐美くらいのもの。

このままではアジア杯は本当に危ない。欧州組、国内組ともに、ここからの奮起に期待したい。

(構成/渡辺達也)