金満ぶりは創設当初のJリーグ以上!  気になるプレーのレベルや環境は?

サッカー後進国のインドで、今年新たに発足した「インド・スーパーリーグ(以下、ISL)」が10月12日に開幕した。ジーコ監督やデル・ピエロなど大物スターを次々と獲得し、今、世界の注目を集めている。

インドといえば、世界2位の人口約12億5000万人を誇る超大国にもかかわらず、サッカーに関しては昔も今も弱小国。最新のFIFAランキングでも159位と低迷している。

そこで「リライアンス・インダストリーズ」(石油やガス開発を手がけるインド最大の企業)、「IMG」(錦織圭やタイガー・ウッズらも所属し、スポーツ事業を手がける米国企業)、「スター・インディア」(インド最大のテレビ局)という巨大企業3社が運営の中心となり、メインスポンサーにインド最大手の自動二輪メーカー「ヒーロー」を据えてプロリーグを開幕。現地では大盛り上がりだという。

全8チームがホーム&アウェー方式で対戦し、その後、上位チームによるファイナルシリーズが行なわれる。最終戦は12月20日。開催期間わずか2ヵ月強の短期リーグだが、ユニークなのは、一日にリーグ全体で1試合しか行なわないというレギュレーション(すべて19時試合開始)。インドではこの期間、ほぼ毎日ゴールデンタイムにISLの試合が生中継されるわけである。

そして、ISLの最大の目玉となっているのが、Jリーグ創成期のごとく集結した“往年のスター選手”だ。

人気や観客動員のアップを狙い、各クラブにはドラフトによって、W杯、EURO(欧州選手権)、コパ・アメリカ(南米選手権)、欧州チャンピオンズリーグなどの国際大会に出場実績のあるマーキープレーヤー(看板選手)が振り分けられている。

錚々たるレジェンドたちの高額年俸

その顔ぶれを見ると、

元イタリア代表FWデル・ピエロ(40歳・デリー・ダイナモスFC) 元フランス代表FWトレゼゲ(37歳・FCプネー・シティ) 元フランス代表MFピレス(41歳・FCゴア) 元スウェーデン代表MFリュングベリ(37歳・ムンバイ・シティFC) 元スペイン代表FWルイス・ガルシア(36歳・アトレティコ・デ・コルカタ)

など、なかなか豪華!

ちなみに、元日本代表監督のジーコも、ゴアの監督としてISLに加わっている。

そうした“レジェンド”がインドに集まる理由は、やはり破格のギャラ。

例えば、名門インテルを2011年に退団後、一度は現役を引退していた元イタリア代表DFマテラッツィ(41歳・チェンナイ・タイタンズの選手兼監督)のギャラは1億円を超えるとされる。

また、元フランス代表FWアネルカ(35歳・ムンバイ)も、昨季イングランドでプレーしていたときよりも高額のギャラを手にしているという。わずか2ヵ月強の短期リーグということを考えれば、なんとも魅力的な話だということがよくわかるだろう。

一方、インド人の一般家庭の平均年収は50万円にも満たない。にもかかわらず、なぜ、それだけの高額給与を払えるのか。

立ち上げに前述の巨大企業が関わっているのが大きいのはもちろんだが、それ以外にも海外の投資家や、人気クリケット選手、“ボリウッド”(インド版ハリウッド)俳優といったインドのセレブリティがクラブ経営に関わっていることも理由に挙げられる。彼らの存在がISLへの関心を高め、さらなる投資を呼んでいるというわけだ。

ジーコに直撃し可能性を聞いた!

そんなISLだが、20年前、選手として創設当初のJリーグでプレーしたジーコはどう感じているのだろう。

試合前日のFCゴアのクラブハウスを訪れると、アポなしにもかかわらず、ジーコは快く取材に応じてくれた。

「Jリーグは、それほど多くの外国人選手を加入させなかった。つまり、少数精鋭。ISLには外国人選手が多すぎるし、全員がいい選手とはいえない。それでも外国人選手が多くいれば、インド人選手よりはうまい彼らを使わざるを得ず、なかなかインド人選手に出場機会を与えることは難しいね」

ISLは今後、Jリーグのような成長を遂げられるのか。

「12億5000万という人口を考えれば、可能性はある。ただ、現状のISLではインド人のプレーするチャンスが少なすぎる。今後は外国人選手を減らすなどして、インド人選手が質の高い外国人選手とプレーする機会を増やす必要がある。もちろん、それには時間はかかるだろうけどね」

ド派手に開幕して世界の注目を集めているものの、その将来については、まだまだ不透明な部分が多いのも確か。果たして、ISLとインドサッカーには、どんな未来が待っているのだろうか。

(取材/栗原正夫)

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