新日本プロレス合宿所の一室で、今日も“怒りの獣神”が勤(いそ)しむガレージキット製作。その現場に突入した!
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これまで作ったガレージキットは全部怪獣。ゴジラ、べムスター、レッドキング、ピグモン、デットン……15体くらいかな。怪獣の何がいいかって、探しに行ってもいないじゃない? 当たり前だけど(笑)。未知なるものを自分の手で作り出す喜び……そこに尽きるような気がしますね。
子供の頃は円谷映画の大ファンだったし、『ウルトラマン』がドンピシャの世代です。大人になって忘れていた怪獣熱が復活したのは蔵前のオモチャ屋さん。会場に向かうとき、なにげなく入った店でガレージキットの怪獣を見つけて買ったんです。自分で作り始めたのは20年くらい前。きっかけは、知人からフィギュア制作の達人を紹介されて、のめり込んでいきました。
僕が作るフィギュアの工程は、まず怪獣の写真を見ながら方眼紙に正面図を書く。これが全体の設計図になります。次にその中に入っている人間を書くと、肩とかヒザとか関節の部分が決定しますよね。その人間の形を、アルミ箔(はく)を巻いた新聞紙で作って、その上に方眼紙の寸法に合うように粘土を盛っていく。最後に塗料で色を付けて出来上がりです。
自作フィギュアを模型イベントに出展! そのときマスクは!?
巡業の合間に合宿所の自分の部屋で作業するから、一体完成させるのに半年から一年くらいかかるかな。粘土を盛っては削るの繰り返し。正確さを期するなら、フィギュア作りに終わりはないですね。
今ではその達人と「グリプト」というサークルを結成して、年に一度開かれる「ワンフェス」(ワンダー・フェスティバル)に出店してます。「ワンフェス」は2日間で数万人が集まる大きな模型イベントなんですけど、今年(昨年取材時)は俺、ノアで試合があって出られなかった! 残念。ブースにマスク被って座ってるかって? 素顔ですよ(笑)。
フィギュア制作は意外と予算がかからないんです。体長25センチのこのレッドキングだったら、粘土が1500円、塗料が1500円くらいだから、3000円くらいで足りて、後はとにかく根気です。ファンの方から時々「誕生日のプレゼントは何がいいですか?」って聞かれるけど、粘土をください(笑)。粘土が一番嬉しいね! ユザワヤで売ってます。
怪獣って、中に人が入っているものでしょ。だから、ぬいぐるみと人の間で生まれる「たるみ」も重要なんですよ。ただ筋肉質な怪獣を作っても「たるみ」がないと嘘になるという難しさもあるんだよね。達人からよく「これじゃぬいぐるみじゃないじゃん!」って叱られます。表側だけじゃなく後ろ姿も大事で、怪獣図鑑の写真と自分が作ったフィギュアを見比べつつ細かな部分はデジカメで撮ってチェックしますね。
フィギュア制作中は後輩には面倒かけませんよ。一日8時間くらい、ず~っと部屋に籠(こ)もりっぱなし。「あれ、ライガーさん、いたんですか?」なんて驚かれて、夜のちゃんこを「すみません、いただきます……」って食べてます。没頭してると福岡の自宅に帰るのも忘れてしまって、嫁さんが呆れてますね(笑)。
■獣神サンダー・ライガー(じゅうしんサンダー・ライガー) 世界のジュニアヘビー級を牽引してきたレジェンド。89年4月に東京ドームで獣神ライガーとしてデビュー以来、マスクマン生活は25年を超えた
■『燃えろ!新日本プロレス』vol.55(2013年11月21日号)に掲載 http://weekly.shueisha.co.jp/moero/main.html
■『詳説 新日イズム 完全版』も絶賛発売中! http://wpb.shueisha.co.jp/2014/10/09/37069/
(取材・文/長谷川博一 撮影/平工幸雄)