各国のホテルで本物の紳士たちを見ながら、葉巻の吸い方を覚えていったという西村修氏 各国のホテルで本物の紳士たちを見ながら、葉巻の吸い方を覚えていったという西村修氏

東京・文京区の区議会議員との二足のワラジで闘う西村修。ダンディな“無我の哲人”が、葉巻の嗜(たしな)み方を伝授してくれた!

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ホテルのバーで好きな酒を選び、好きな葉巻をくゆらす。それが私にとって至福の時間です。

初めて葉巻を体験したのは1997年、ドイツのCWAという団体の巡業に参加していたとき。私の誕生日にデューク・ザ・ダンプスターというレスラーが、ドンペリとモンテクリストの4番という葉巻をプレゼントしてくれたのが最初です。

その後、私は病気になり葉巻を控えていましたが、2001年からフロリダにアパートを借りて住むことになりました。現地にはカール・ゴッチさんも住んでいたので、日本でキューバ産の葉巻をたくさん買ってお土産に持っていきました。

日本だと1本2~3千円くらいしますよね。それを聞いたゴッチさんは怒りだして、「私はブランドに拘(こだわ)らないし、そんなお金があるならフロリダに住むキューバ移民の葉巻工場を紹介するから、彼らから買ってあげてほしい」と。

工場を訪ねると、手巻きの葉巻が1本1ドルくらいですよ。日本で10本買うお金で200本くらい手に入ります。しかも味も悪くない。それ以来、日本に帰国する際には私もこの工場で大量に買って愛用していました。

ゴッチさんは70代後半になっても毎日トレーニングをして、夜は赤ワインで食事を摂(と)った後、スリボビッツというプラムのブランデーを飲みつつ葉巻を吸うのがお好きな方でしたね。私自身は各国のホテルを巡りながら、本物の紳士達が葉巻を楽しむマナーを目で盗みつつ吸い方を憶えていきました。

今日は「葉巻を楽しむ10箇条」を書き留めてまいりました。

葉巻の選び方から…“哲人”の10箇条!

 西村氏が伝授する「葉巻を楽しむ10箇条」。これを肝に銘じて、ホテルのバーでクールに嗜みたい 西村氏が伝授する「葉巻を楽しむ10箇条」。これを肝に銘じて、ホテルのバーでクールに嗜みたい

まず選び方。葉巻の種類はマイルド、ドライのほか、コーヒー味や苺(いちご)味などもあり多岐にわたります。私はいろいろ試した結果、ドライに行き着きました。

葉巻は湿度を常に70%以上に保つ必要があるので保管は大事な作業。自宅にはフロリダで買った大型のヒュミドール(葉巻の保管庫)を置いています。

吸い口に切り口をつけるには、通常シガーカッターやナイフを使います。私はナイフで縦筋を一本入れるくらいが好きですね。これは切り口が猫の目に似るので「キャッツ・アイ」と呼ばれています。

葉巻に火をつけるときは、オイルライターはオイルの匂いが移るので厳禁。ロングサイズのマッチが最も使いやすいと思います。

人に迷惑をかけない吸い方は紳士の必須のマナーでしょう。周りに食事をしている人がいたら控えますし、煙は必ずゆっくりと上に吹くようにします。

煙草のようにポンポン叩いて灰を落とすのもダメ。温度が変わってしまいますから。保湿の状況がいい葉巻は自然に灰がボロンと落ちるんです。上手に吸うには年季が必要ですね。私の場合も3、4年かかりました。

葉巻に合う酒、音楽は?

葉巻に合う酒はストレートで強いもの。ウイスキーのシングルモルトがベストと仰(おっしゃ)る方が多いですね。

吸う環境は、やはりホテルのバーが妥当でしょう。Tシャツに短パンというわけにはいきません。私は現在、文京区の区議を務めているので、いわばスーツが制服。ホテルに行くには持ってこいですね(笑)。

そして、葉巻に似合う音楽はジャズやブルース。個人的にはフランク・シナトラがベストだと思います。

男は格好をつける生き物。葉巻は洒落(しゃれ)たダンディの嗜みで、その辺にも惹(ひ)かれました。意外とシャンパンも合うんですよ。

女性を口説くには絶対にシャンパンです。1本目より2本目はいいものを選んで味の違いを教えてあげたり。ああ、独身時代が懐かしい(笑)。

■西村修(にしむら・おさむ) 1971年生まれ、東京都出身。91年、新日本プロレスでデビュー。98年に癌を患い長期欠場するも克服し2000年に復帰、IWGPタッグ王座にも君臨。11年より文京区区議会議員を務めている

(取材・文/長谷川博一 撮影/平工幸雄)

■『燃えろ!新日本プロレス』vol.65(2014年4月10日号)に掲載 http://weekly.shueisha.co.jp/moero/main.html

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