このところブーム再燃の新日本プロレスだが、その中で、ひと味違う大会が新春の名物化しているのをご存知だろうか?
1・4東京ドーム興業後の1月13日から19日にかけ、4都市で6日間にわたり開催された「FANTASTICA MANIA(ファンタスティカマニア)」がそれである。
提携しているメキシコ最大のプロレス団体CMLLから現地の選手(ルチャドール)を招聘(しょうへい)し、メキシコのプロレス「ルチャリブレ」を日本にいながら観られるとあって、ファンの間で凄まじい人気を呼んでいるのだ。
この“ルチャリブレの祭典”は、2011年から毎年1月に開催され、年々ファン層を拡大、5回目で過去最大規模となった今年は実に17選手が参戦し、新日のファンクラブの会員先行予約だけで売り切れた会場も。もちろん県外から遠征するファンも多い。
これほど人気沸騰する大会、そしてルチャリブレの魅力とは? その熱気を追っかけリポートしてみた。
■グッズを買うなら初日がオススメ
初日は、数々の名勝負を生んだ大阪府立体育館が名称変更したBODYMAKERコロシアム。会場の第2競技場へ入ると、1年ぶりのルチャリブレを待ち望むファンの熱気でむせかえるほどだ。
まず、ロビーのオフィシャルグッズ売り場がすごい人だかり! 菅林直樹会長の趣味(!?)で仕入れる人形やピアスなどメキシコ雑貨に加え、ルチャドールたちが持参したオリジナル商品まであり、サイン会対象商品を購入すれば選手にサインもしてもらえる。
ちなみにこの日のサイン会は超有名なルード(悪役)、ウルティモ・ゲレーロと20歳差の弟グラン・ゲレーロ。現地でもメイン級の大物タッグの登場にファンは大興奮だ。
会場には色鮮やかなマスクを被っている観客もチラホラ。ルチャドールにはマスクマンが多く、日本ではありえない配色とデザインに魅せられるファンも多い。
マスクは会場でも購入でき、被って観戦すれば気分も盛り上がるというもの。飲み会の余興にも使え、風邪予防にもなる(ウソ)スグレモノだ。5000円ほどから2万円を超えるものまで価格は様々だが、ほとんどが職人による手仕事なので、出会った時が買い時だ。
客の財布の紐も緩みまくりで、“ルチャ女子”として有名な女子アナ・元井美貴さんは、原始人キャラのカベルナリオ選手の「骨」を4000円で購入したという。原価が気になる安手のプラスチック製でサインはなく、つまりただのオモチャ。評価も高い期待の超新星だが、気分をアゲさせるのも“ルチャマジック?
会場ではタコスやコロナビールも販売しており、メキシコ気分を満喫しながら観戦できる幸せに満たされる。ルチャドールたちがつける香水だろうか…この大会はいつも独特の匂いがするのも媚薬のようだ。
新日本の看板選手もルチャ仕様で魅せる!
■ファン層の広さが物語る人気
翌日は初開催となる香川県・高松総合体育館に移動。この日のカードも人気、実力ともに高い選手が名を連ねるが、ファンのお目当ては参戦する新日本本隊の人気選手によるところも絶大。
棚橋弘至はフェイスペイント、内藤哲也はオリジナルのマスク、中邑真輔はマスクを模した頭巾で登場。この頭巾がどことなく学芸会風で笑いを誘うのだが、それを泣く子も黙る中邑選手が着用するというギャップに萌える女子も多数とか?
彼らに共通するのは、メキシコでの試合経験があること。普段は新日ストロングスタイルの攻防も、この大会に限ってはいつもと違う表情を見せるのも魅力なのだ。
中でも“レインメーカー”オカダ・カズチカは、実はデビューがメキシコ。ルチャ・スキルの高さには自負もあり、タッグを組むルチャドールに合わせて、いとも簡単にスタイルを変幻自在。190cmの長身から場外に飛ぶ『トペ』は大会の名物となりつつある。
実際、観客に聞いても、お気に入りの新日所属選手を追っかけてルチャにハマったファンも多い。この盛り上がりには、ルチャ・スタイルに親和性の高い選手の貢献もあるのだ。また、オタクが多いと思われているプロレス会場だが、今や子供から大人まで幅広い層が支持。
特に驚くべきは女性の多さで「オカダさんが好き!」という若い女性は県外からわざわざ観戦。小学生を連れたお母さんは「絶対にファンサービスしてくれないけど、そこが好き?」という中邑の勇姿に頬は紅潮し、心なしかお肌もツヤツヤだ。プロレスのアンチエイジング効果を目の当たりにした思い…。
さらに、長身のモデル系女性二人組は若手テクニコ(正義役)、ミスティコのサイン入りTシャツを持っていた。「田口選手を見に来たんですけど、ミスティコもかっこよくて」…かつての男くさい殺気と熱気むんむんだったプロレス会場とは隔世の感だ。
日毎にノッてくる本場ルチャドールたち
■ルチャドールたちが本領発揮し始めた…!
関西での最終日は京都・KBSホールでの開催。大会3日目を迎え、ルチャドールたちの繰り出す技のバリエーションが全然違うことを発見!
実は高松大会後、前述の“ルチャ女子”元井美貴さんにバッタリ再会。マスク好きが高じて、スペイン語検定まで受けるに至った猛者で、ルチャリブレ界の間口を日本に広げた功労者に話を聞かなくてはと、突撃インタビューしてみると…。
「メキシコのリングとは、ロープの硬さやマットのコンディションも違うので、空中殺法が得意なレイ・コメタ選手が必殺技『コメタスペシャル』を出さなかったり、選手たちに初日は“様子見”もあったのかも。
私のイチオシはバルバロ・カベルナリオ選手(やっぱり)!で、スティグマ選手の入場曲が好きで、彼が踊りながら入ってくるのも観られてよかった! あと…(以下、マニアックすぎるため略)」
そのコメント通り、ルチャドールたちのコンディションは日を追って上がっていくようで、まだ見ぬ未知数のパフォーマンスがますます楽しみに!
一方、この日のサイン会は空中殺法の名手、マスカラ・ドラダ選手。2010年の初来日以来、13回の新日マット参戦を重ねるうち、誰かに変な日本語を教えられたようで、坂上二郎さんばりに「トビマストビマス」と連呼。意味不明の愛らしさでお茶の間に進出する日も近いかもしれない!?
●後編の東京大会リポートは明日配信予定!
(取材・文・撮影/明知真理子 写真提供/新日本プロレス、元井美貴)