日本のエース、松坂大輔が帰ってきた。第1回WBCで日本代表を優勝に導いた翌年(2007年)、メジャーリーグのボストン・レッドソックスに入団。その年にワールドシリーズ優勝を経験するなど大活躍。
しかし、2011年に肘(ひじ)の手術を受けると、その後は振るわず。昨シーズンは9試合に先発し3勝しか挙げられていない。日本復帰は喜ばしいが、果たしてこのような状態で再ブレイクはあるのか?
しかし、「私は復活すると思っています」と語るのは、侍ジャパンで投手コーチとして松坂を見てきたプロ野球評論家の与田剛(よだつよし)氏だ。
「肘の手術を終えた今の松坂は、徐々にバランスが良くなっていますから」
とはいえ、手術後から登板数や勝ち星は極端に減っている。やはり、力が落ちたことを示しているのでは?
「手術から3、4年たっているので、松坂は今の自分の状態に対応しているはずです。昨シーズンの松坂を見ていると、カーブなどの変化球が多くなっている。
これは、昔のように150キロのスピードボールはなかなか投げることはできないけれども、そのスピードボールを速く見せるために変化球を多くして、勝つための投球をしているからです。
変化球を多く投げると力のない軟投派のように思われ、速いボールで勝負したほうがすごいピッチャーだとイメージされがちですが、打者をどう打ち取るかということに関しては、変化球もスピードボールも同じです。どの球で勝負するかの違いでしかありません」
日本復帰の影響は?
では、なぜ松坂は日本に戻ってきたのだろう?
「プロフェッショナルの野球選手であれば、最高レベルの舞台での活躍を目指すものです。そして、やはり松坂ならば先発を希望しているでしょう。
そんなときに、ソフトバンクには松坂が希望する様々な好条件があった。ただ、それだけのことだと思います」
いじわるな言い方をすれば、メジャーで通用しなかったから日本に戻ってきた。そういう見方もできるが…。
「そういう見方もあってもいいと思います。アメリカで結果を残せなかったら、そう言われてもしょうがない。でも、重要なのは場所がどこであれ“必死になって野球をしたい”という気持ちだと思うんです」
これまで8シーズンにわたってメジャーのプレースタイルに合わせて野球を続けてきた松坂だが、ボールの違いなども含め、また日本の状況に対応することはできるのか。
「メジャーのボールは日本に比べて滑りやすいので、すっぽ抜けてしまったり、逆に力を入れすぎて引っかかったり指先の感覚が微妙に違います。だから慣れるまでに時間がかかる。でも、日本に帰ってきたら、それを元に戻せばいいだけですからすぐに調整できると思います」
最後に、松坂が日本に戻ってきたことの影響は?
「WBCでは日本の投手陣を引っ張っていく存在でした。野手でいえばイチロー選手のような信頼と多くの経験を持つピッチャーです。そして非常に研究熱心で、いろいろな選手が彼の姿を見て育っていきました。
ですから、日本に戻ってきてプレーするという選択をした彼の“生きざま”が、多くのプロ野球選手やファンの皆さんに伝わるのではないでしょうか」
このように松坂の再ブレイクを願う声は非常に多い。期待して見守りたいものだ。
(取材/村上隆保 取材協力/熊谷あづさ)