アジア杯は地元オーストラリアが初優勝を飾った。

決勝の相手は韓国。スタジアムは満員で、試合内容もボール際で激しい攻防が繰り広げられ、実に見応えがあった。

オーストラリアは先手必勝とばかりに最初から飛ばし、前半終了間際、思い切りのいいミドルシュートで先制。後半に入ると、ガッチリと守りを固めた。対する韓国はなりふり構わず必死に反撃し、アディショナルタイムにエースのソン・フンミンが意地の同点ゴールを奪ったものの、延長前半終了間際にオーストラリアが決勝点を奪い、そのまま2-1で逃げ切った。

結果的に、常に先手を取ろうというオーストラリアのゲームプランが功を奏したね。ただ、実力的には互角。どっちに転んでもおかしくない好ゲームだった。

両チームともここ数年は世代交代の時期に入っていた。特に、オーストラリアはキューウェル、ニール、シュウォーツァーらの時代が終わり、開幕前はベテランのケーヒルばかりが注目されていた。ところが、フタを開けてみれば、中盤のレッキー、クルーズ、ルオンゴら強くて運動量の豊富な選手たちが次々と前線に飛び出し、対戦相手の脅威になっていた。

一方の韓国も、2011年アジア大会(カタール)後にパク・チソンが代表引退して以降はパッとしなかった。ただ、ドイツでブレイクしたソン・フンミンが、今回は“韓国サッカーの顔”にふさわしい活躍を見せた。

昨年のブラジルW杯では、両チームとも1勝もできずに敗退。そこから大きくレベルアップしたというわけではないけど、先を見据えて進めてきた世代交代が、ようやく実を結びつつあるという印象だ。

世界のパワーサッカーにどう対抗すべきか?

ブラジルW杯で優勝したドイツに象徴されるように、最近はフィジカルを前面に出したパワーサッカーが世界のトレンド。今やブラジルだってボランチに屈強な大型選手を並べている。アジア杯の決勝を見ても、その傾向は明らかで、両チームともサイズの大きい選手をそろえ、当たりの激しいハードなサッカーをやっていた。

そうしたサッカーに対し、スピードと技術はあっても、小柄な選手ばかりでボール際の激しさに欠ける日本は今後、どう対抗すべきか。まさに今、かつての世界王者スペインも同じところで苦労している。大きな課題を突きつけられたね。

それなのに、今回の日本の準々決勝敗退について、きちんとした総括や議論がされないままアギーレ解任、そして後任監督人事の話題一色になってしまったことが怖い。

もしUAEとのPK戦に勝っていたとしても、今回の日本のサッカーではオーストラリア、韓国を打ち破って連覇を達成するのは難しかったと思う。大会全体を振り返っての正直な感想だ。

そもそも優勝した4年前だってPK戦や延長戦など紙一重の試合の連続だった。決して、日本の力が頭ひとつ抜け出ていたわけじゃないんだ。

それから4年、日本は大幅なレベルアップを遂げたわけでもないし、世代交代も進んでいない。その現実をしっかり受け止めなければいけないよ。

いつの間にか、W杯に出るのは当たり前といった風潮になっているけど、次のロシアW杯は、アジア最終予選の組み合わせ次第では大変なことになるかもしれないね。

(構成/渡辺達也)