2年連続のセ・リーグ最下位に沈んだヤクルトの改革を託された真中満新監督

2年連続のセ・リーグ最下位と弱い上に地味。たまに話題になるのも、続出するケガ人とマスコットのつば九郎くらい。

だが、今年のヤクルトは話題が豊富。しかも昨年までとは違う、ポジティブな話題だ。今年はやってくれる…と、つばめファンは早くも期待値MAXなのである。

そして、その中心にいるのは今季から監督に就任した、この人。現役時代はヤクルト黄金期のトップバッターを担い、明るいキャラクターでファンから愛された真中満(まなかみつる)新監督(44歳)である。

2年連続最下位と低迷するチームの命運を託された、12球団最年少監督を直撃!

―今オフはかつてない大補強を行ないました。これまであまりお金を使ってこなかった球団が、今年はなぜこんなにも大盤振る舞いを?

真中 それはフロントに聞いて(笑)。でも、ヤクルト本社が創業80周年だし、2年連続最下位でフロントも「今年こそ」という気持ちがあった。その思いが合致してこうなったんじゃないかな。

―まず、FAで日本ハムからショートの大引啓次(おおびきけいじ)内野手を獲得しました。

真中 ウチは川端(慎吾)、山田(哲人)、中村(悠平)と若い選手が内野を守ってるから、大引には彼らを引っ張ってもらいたい。ただ、FA入団ってそれだけでプレッシャーになるので、チームの一員としてのびのびやってもらえればいいかな。

―そして、ロッテから成瀬善久(よしひさ)投手も入団。失礼ながら、まさかヤクルトが獲得するとは…。

真中 俺も本当に獲れるのかよって思ってた(笑)。そのくらい、この補強は大きい。1年間ローテーションを守れる安定感があるから、きっと結果も出してくれるだろうね。

―さらに中継ぎ候補として、現役メジャーのオンドルセク投手まで獲得。

真中 先発、中継ぎ、遊撃手と軸が3人取れたから補強としてはベスト。でも大事なのは、もともといる選手が、昨年足りなかったものは何かを自分で考えてカバーしていけるかなんだよね。

ヤクルト黄金期との違い

―2年連続最下位という状況をどう見ていました?

真中 昨年は打撃コーチという立場で見ていて、特に投手陣は制球力、スピード、メンタル面など、あらゆるところでほかの5球団より弱かったと思う。でも、野手は畠山(和洋)、川端といったレギュラー格に山田、中村の若いメンバーが加わって、雄平も打者として開花したから打撃面はよかったね。

―確かに、チーム打率はセ・リーグ1位、得点も12球団1位でした。

真中 ただ、監督の立場で見るとディフェンスが重要。中村は捕手として経験が浅いし、山田も雄平も守備はまだ厳しい。防御率が12球団で最低だったわけだけど、投手が打たれただけじゃなくて、野手による数字として残らないエラーも多かった。そこを改善していきたい。

―そのあたりが10年間で5度のリーグ優勝、4度の日本一に輝いたヤクルト黄金期との違い?

真中 あの頃は、みんな勝ちに貪(どん)欲で、勝つ喜びも、負ける悔しさも知ってたね。だから、俺もそれを感じさせながらプレーさせたいなって。打者は打率3割、投手はふた桁勝利をクリアすれば個人の達成感はあるだろうけど、プロである以上はチームを優勝させることが使命だから。

―今年のチームスローガン「つばめ改革」にはどんな思いを込めたのですか?

真中 今は選手を管理しすぎるところがあるんで、自分で考えて練習をやるってことを根づかせたい。メニューは首脳陣が出すけど、それをただこなすんじゃなくて目的を考えながらやってほしい。

―選手の自立を促す?

真中 そうだね。例えば、上司が残業してるから自分も残業するみたいな風潮が野球界にもあって、先輩が帰るまで惰性でダラダラ練習してる選手もいる。でも、それはムダだと思うんだよ。

過去にいろんな選手を見てきたけど青木(宣親[のりちか]現サンフランシスコ・ジャイアンツ)とか山田とか、力のある選手は周りに流された練習なんてしないもん。自分で考えて、困ったときに初めてコーチや俺に聞くぐらいがちょうどいいよね。

理想は野村監督だが…

―監督自身は理想とする監督像はありますか?

真中 やっぱり、入団当初にお世話になった野村(克也)さんの教えと監督としてのあり方は俺にとって大きい。試合で切羽詰まった状況になると、選手は監督をチラチラ見るもんなんだよ。だから、理想はどっしり座って、選手に動揺を与えない監督になりたい。

とはいっても、俺は44歳だし、野村さんみたいにふてぶてしく座ってる度胸はまだないけど(笑)。

―DeNAは中畑清監督の“キヨシ効果”で世間の注目を集める機会が多いです。それに負けじと、真中監督も持ち前の“愛されキャラ”を発揮して前に出ますか?

真中 いやいや、俺はいいよ(笑)。必要に応じて前には出るけど、監督がそんなに目立ってもしょうがない。やっぱり、選手がスポットライトを浴びてなんぼでしょ。

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(取材・文/武松佑季、昌谷大介[A4studio] 撮影/高橋定敬)

■週刊プレイボーイ8号(2月9日発売)「真中満(東京ヤクルトスワローズ監督)『本当に優勝が目標です!』」より