日本代表の新監督候補の名前が、連日のようにスポーツ新聞の紙面をにぎわせている。日本サッカー協会からすれば、ホッとひと安心といったところかな。

世間の関心を「任命責任」から「次の監督」に向け、責任の所在をうやむやにする。そして、組織の見直しもしないまま、なし崩し的に次の体制をスタートさせる。メディアもファンも、こんな見え見えのやり方にダマされてはいけない。

八百長問題によるアギーレの契約解除という判断自体は妥当だ。検察による告発が受理された以上、今後の代表監督の仕事になんらかの差し障りが生じかねないわけだからね。また、それ以前に、すでに日本サッカー全体が大きなイメージダウンを被(こうむ)っていたことも見逃せない。

問題はその後。残念だけど、協会の悪い体質がまた露呈した。

惨敗した昨年のブラジルW杯後、なんの反省もなく、誰も責任を取らないまま後任監督を選び、今回の一件が起きても、また同じスタッフが後任探しに当たっている。誰が考えてもおかしいよね。

まず協会がすべきことは、何が問題だったのかを検証し、責任を取るべき人が責任を取り、新しく組織をつくり直すこと。監督選びに取りかかるのはそれを終えてからだ。

思えば、2006年のドイツW杯で惨敗した直後、川淵(三郎、現・日本サッカー協会最高顧問)さんが成田空港で「あ、オシムって言っちゃったね」と発言したことがあったけど、あの時と何も変わっていない。

本当に違約金は発生しなかったのか?

また今回、協会の大仁(だいに)会長はアギーレの解任にあたり、「違約金の形はない」と話していた。でも、それも疑問。通信販売のお試し期間じゃあるまいし、電話一本でクビを告げて、相手が「はい。わかりました。じゃあ、私は1円もいりません」と素直に引き下がったのだろうか。

仮にそうだったとしても、今回の一件で契約解除となったのはアギーレだけじゃない。八百長問題とは無関係の3人のコーチ、通訳も含まれるんだ。彼らに対しても違約金は発生しなかったのかな。それは考えにくいよね。どうして大仁会長はそこを語らず、メディアも突っ込まないのだろう。

その大仁会長は、次の監督について「(3月にある親善試合のための)間に合わせ人事はしたくない」と強調していた。当然だよ。

ただ、今までの協会のやり方を考えると、これ以上スポンサーやファンに悪い印象を持たれたくないから、なんとしても3月の試合に新監督就任を間に合わせるはず。

とはいえ、今の協会の体制で、まともな監督を連れてこられるとは思えない。これだけたくさん候補の名前が報じられ、なかには「オファーを断った」という候補本人のコメントも複数出ている。協会が彼ら全員と直接交渉したとは思えないし、結局、代理人のマーケットに「誰かいい人はいませんか?」と投げ込んで、返事待ちという状況なんじゃないかな。

もちろん、世界的な名将や意外な大物が来てくれる可能性はゼロじゃないけど、そこに継続性はない。最後は同じことの繰り返しになると思う。

6月開幕のロシアW杯2次予選は、誰が監督をやっても突破できる。焦る必要はない。まず優先すべきは、次の監督選びではなく協会内の改革だよ。

(構成/渡辺達也)