サッカー日本代表の新監督がようやくヴァヒド・ハリルホジッチに内定し、日本サッカー協会との間で最後の詰めの交渉が進められている。
ボスニア・ヘルツェゴビナ出身の62歳。昨年のブラジルW杯ではアルジェリア代表を率い、グループリーグ中で最弱と目されながら2位で突破。優勝したドイツに延長戦の末に敗れたものの、チームをベスト16に導いた。過去にフランス、モロッコ、トルコ、サウジアラビア、クアチアでクラブ監督、さらにコートジボワールでは代表監督を務めており、経験豊富だ。
今回の監督人選について、サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏はこう語る。
「現時点でフリーであり、W杯やクラブレベルで実績を残している指導者という条件の中では、当然行きつく名前。悪くないチョイスだと思います。欧州のみならず、アフリカなど異文化の地で仕事をしてきているのも日本向きだといえます」
このハリルホジッチ、具体的にどのような特徴を持った指揮官なのか。2010~11年シーズンに彼がディナモ・ザグレブ(クロアチア)で監督を務めた際、現地で密着取材を続けたリトアニア在住のサッカージャーナリスト、長束恭行(ながつかやすゆき)氏が言う。
「選手全員がハードワークし、攻守の切り替えが早いのは、彼が率いるチームに共通する特徴ですが、これといった自分のスタイルを押しつける人ではない。手持ちの戦力の特徴を生かした上で相手を徹底的に分析し、臨機応変に戦って結果を出す監督です」
ザックやアギーレにもできなかったこと
ブラジルW杯での戦い方が、まさにそれだった。一戦ごとにシステムを変え、敵の長所を封じた上で、果敢に攻め立てたのである。
「ザグレブ時代、ヨーロッパリーグの試合でレアル・マドリード、バルセロナに次ぐスペイン国内3位だったビジャレアルと対戦したのですが、ハリルホジッチは徹底したカウンターを仕掛け、見事に2-0で勝利しました。
また、フランスでリールを率いていた際には、チャンピオンズリーグの予備予選で中田英寿を擁する格上のパルマを破り、本戦に進出しています。彼はこういった“ジャイアントキリング”を起こすのが得意なんですよ」(長束氏)
かといって、堅守速攻一辺倒というわけではない。国内リーグでのザグレブはポゼッション型の常勝チームだったし、コートジボワール代表ではドログバらを軸に超攻撃的なサッカーを構築した。
「W杯を勝ち抜くには、様々な戦い方を選手に理解させ、植えつけなければなりません。ザッケローニやアギーレが日本でできなかったことだけに、彼には期待したいですね」(前出・後藤氏)
どんな環境でも確かな手腕で堅実なサッカーを展開するベテラン監督。それが彼の評判だ。実はこういった人こそが、日本代表の監督にはピッタリなのかもしれない。
■週刊プレイボーイ12号(3月9日発売)「アギーレ・ジャパンに続いて“ハリル・ジャパン”まで短命に終わらせるな!」より(本誌では、さらに協会への危惧も!)