日本代表の新監督がボスニア・ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチに決まった。
まず、このコラムでは何度も言っているけど、その決定に至るまでの過程にはたくさん不満がある。
昨年のブラジルW杯で惨敗したのにきちんとした検証を行なわず、日本サッカー協会の誰も責任を取らず、新監督のアギーレに話題をすり替えた。そして、そのアギーレを八百長問題で更迭(こうてつ)することになっても結局、誰もまともに責任を取らなかった。また、大した議論や説明もせずに初めから「外国人ありき」だった今回の選考基準もよくわからないね。
とはいえ、決まった以上はハリルホジッチに頑張ってもらいたいし、なんとか日本代表を立て直してほしいというのが率直な気持ちだ。
恥ずかしながら、今まで彼のことはほとんど知らなかった。唯一、記憶にあるのは昨年のブラジルW杯で彼が率いたアルジェリア代表のプレーぶりだね。同国史上初めてグループリーグを突破し、決勝トーナメント1回戦では優勝国ドイツを相手に延長戦まで持ち込む粘りを見せた(1-2で敗戦)。あの時のアルジェリアはビッグセーブを連発したGKエムボリばかり目立っていたけど、フィールドプレーヤーも全員がサボらずによく走っていたことを思い出したよ。
聞くところによると、ハリルホジッチはかなり頑固で短気な性格とのこと。ブラジルW杯後に監督就任したトルコのクラブでは、現場介入するフロントと対立し、わずか3ヵ月で契約解除となっている。それ以外にも、過去にはメディアやフロントとたびたび衝突してきたという。
遠慮せずに協会にどんどん要求を出すべき
そんな彼の気難しい性格から日本代表でも何か問題を起こすんじゃないか、と懸念する声もあるようだ。
でも、僕はそこにむしろ期待している。なぜなら、停滞ムードに覆われた今の日本サッカー界には、率直な物言いができて、チームを強くするためなら衝突も辞さない人間が必要だと思うからだ。
振り返れば、日本代表はトルシエが率いていた時(1998~2002年)が一番刺激的で面白かった。彼もまた歯に衣着せぬ発言で、時にメディアと、時に協会と衝突し、いい意味での緊張感を周囲にもたらしていた。ハリルホジッチにもそういう“劇薬”としての役割を期待したいし、遠慮せずに自分の色を出してほしい。
特に、今の協会はできるだけ波風を立てたくないはず。アギーレに続いて、ハリルホジッチまで短期間で解任となったら、さすがにまずいと考えているだろうからね。だからこそ、ハリルホジッチはチーム強化のためのリクエストをどんどん協会に出して、メディアの前でも公言すべき。例えば、「アウェーでの強化試合を組まないと、今のままでは強化なんて無理」とかね。
そうした要求に協会が本気で向き合わなければ、短気な彼は「こんな組織と仕事ができるか」と愛想を尽かして辞めてしまうかもしれない。でも、そうなったらそうなったで今度こそ世間は協会を許さず、協会の体質が変わるきっかけになるとも思うんだ。
何はともあれ、まずはお手並み拝見。
6月から始まる2018年ロシアW杯アジア2次予選に向けて、ハリルホジッチがどんなメンバー選考をするのか。どんな選手に目をつけるのか。そこに注目したいね。
(構成/渡辺達也)