チュニジア、ウズベキスタンとの2連戦で日本代表がリスタートした。

とはいえ、ハリルホジッチ新監督に与えられた準備期間は少なく、強化というよりも日本サッカー協会による“新監督お披露目イベント”といった意味合いが強い。どんな名将でも、これほど短期間で自分の色をはっきりと打ち出すのは難しいし、結果や内容に一喜一憂する必要はない。

日本代表のメンバーは通常、試合登録の23人に2、3人を追加した25人程度の選手が招集される。ところが、ハリルホジッチ監督は代表メンバーとして31人を呼び、さらに12人のバックアップメンバーを選出した。

ただ、その顔触れを見れば、今までの代表の主力に加えて、協会の技術委員会がリストアップしたと思われる若手、そしてハリルホジッチ監督本人が視察に行った試合で目立っていた選手をプラスした感じで、大きな驚きはない。

スポーツ紙などが「サプライズ」と報じたベテラン遠藤の落選についても、“妥当”な判断だろう。長年、代表の中盤を支え、日本代表最多キャップ152試合を誇る彼もすでに35歳。3年後のロシアW杯を目指そうというチーム状況を考えれば、誰が監督になってもそうするんじゃないかな。実際、ハリルホジッチ監督の前任のアギーレも、就任当初は遠藤を招集していなかったわけだからね。

ただ、ハリルホジッチ監督が「ものすごく大事な試合で遠藤が必要な時は呼びたい」と含みを持たせていたようにこの先、遠藤がずっと代表に呼ばれなくなるかといえば、そんなことはないと思う。

確かに、昔に比べれば運動量は落ちた。守備でも相手についていけなくなっている。90分間プレーするのは厳しいなと感じることも増えてきた。

遠藤は日本でなかなか育ちにくいタイプの選手

それでも、遠藤は試合のリズムを変えられる貴重な存在だ。そもそも彼はフィジカルで勝負していない。自分が走らなくても精度の高い長短のパスで周囲を生かせる。ペナルティエリア内に入ってシュートを打つとか、相手の裏へ抜け出すようなプレーをしない代わりに少し下がった位置で全体の流れを見る。

そして、前にいる選手が相手の圧力を受ければサポートに入ってボールを受け、そこからまた冷静に攻撃を組み立てる。スピードがなく、ワンテンポ遅れて見えるかもしれないけど、だからこそ展開が早く、皆が縦に急ぐ今のサッカーでは遠藤のそうした“タメ”をつくるプレーが効果的なんだ。

特に「もっと動け」「もっと走れ」と、たくさん走ることがやたらと評価される日本の部活サッカーの中では、なかなか育ちにくいタイプの選手。海外の選手でたとえるなら、イタリア代表のピルロに似ているね。

所属のG大阪で今野や明神など守備の得意な選手とボランチのコンビを組むことで持ち味を発揮しているように、代表でもそういう選手と組めば、まだまだ活躍できる。今の代表メンバーで“ポスト遠藤”の1番手といわれる柴崎にとっても、いいお手本になるだろう。

だから、ロシアW杯本大会はともかく、W杯予選を戦っていく中で彼の力が必要になるときが来てもなんら不思議はない。

もっとも、それは日本代表が人材不足ということの裏返しでもある。遠藤にはまだまだ頑張ってほしいんだけど、少し複雑な気持ちになるね。

(構成/渡辺達也)