チュニジアに2-0、ウズベキスタンに5-1、ハリルホジッチ監督を迎えた新生・日本代表が連勝スタートを切った。

新鮮味のある選手がスタメンでプレーするなど2試合で計27人もの選手がプレーし、たくさん点が入って盛り上がった。“新監督お披露目イベント”としては成功だ。また、ハリルホジッチ監督にとっても、勝てたことは大きい。最初から連敗したりしたらプレッシャーを受け、新しいことを試しづらくなるからね。

何はともあれ、2試合ともきっちり勝ったことは評価したい。ただ、今回の結果をもって、いきなり「ハリルホジッチはすごい」と持ち上げるのは短絡的すぎる。はっきり言って、この2試合はアギーレが監督でも勝てた。決してハリルホジッチのおかげじゃないし、日本が急に強くなったわけでもない。

なぜなら、2試合ともまるで同じ展開だったよね。前半はなかなか相手の守備を崩せず、長旅の疲れもあり、それほどモチベーションが高くない相手の足が止まる後半に途中交代で入ったフレッシュな選手が活躍する。

つまり、後半に日本のプレーが劇的によくなったように見えたのは「相手の問題」と「6人交代」という国内開催の親善試合ならではの理由があるということ。後半から出る選手ばかり得をする。以前からそうだけど、日本に“お客さん”を呼ぶ親善試合は評価が難しいし正直、もうこういう試合は見飽きた。

相手がまだ元気だった前半だけを見れば、選手たちのプレーからはボールを奪ったら速く攻めようという意識が伝わってきた。今までの中盤でじっくりパスを回すサッカーとは異質。

ただ、タテに速いサッカーは効率的だけど、パスミスが多くシュートを打った場面も相手の守備も崩し切れていない。パスの出し手と受け手の関係だけで全体の連動性は乏しかった。サイドからの崩しももっと欲しかったね。そこは課題だ。

トルシエ以来の“劇薬”?

もうひとつ気になったのは、プレーにメリハリがないこと。新しい監督にアピールしたいという気持ちはわかるんだけど、序盤から一本調子で飛ばしすぎて途中で息切れしていた。45分持たないサッカーでは3人交代の本番は戦えないよ。

繰り返しになるけど、6人も交代できる試合で「采配的中」という言葉を使うのはダメ。まだ、いいのか悪いのかよくわからないというのが正直なところだ。

また、多くの選手を使ったことについて「世代交代を進めた」「競争意識を持たせた」と評価する声もあるけど、アギーレだって最初は世代交代を意識して、あっと驚くような若手を抜擢(ばってき)した。ブラジル戦でも経験の少ない若手を起用した。

でも結局、結果が求められるアジア杯では元に戻してしまった。そういう意味で6月から始まるW杯2次予選にどんな選手を呼ぶのかに注目すべきだろう。

ただ、采配はともかく、ハリルホジッチ監督のキャラクターは面白いね。彼は選手が自分よりも目立つことが嫌いなんだろう。主役は俺だと。最初の試合で本田と香川をスタメンから外したのも「誰も特別扱いはしない」というメッセージ。選手交代時のアクションもオーバーだし、練習時に選手と一緒にランニングや筋トレをするのもメディアを意識してのものだろう。

ウズベキスタン戦後、ピッチ上でわざわざ選手に円陣を組ませたのも「俺のチームだ」というパフォーマンスに見えた。トルシエ以来の“劇薬”がきたな、という感じ。日本サッカー協会にも遠慮はしなそうだし、マンネリをぶち壊してくれるんじゃないかという期待はある。

もっと強い相手と試合を!

●よかった選手

岡崎がいつもどおりによかったね。

あとは、以前から「代表で試してほしい」と言っていた宇佐美が結果を出したのは大きい(2試合とも出場し、ウズベキスタン戦で1得点)。自信になっただろう。

とはいえ、2試合とも後半からの出場。スタメンで出場してあれだけのプレーができたら、初めて合格点を与えられる。騒ぐのはまだ早い。

宇佐美と同じくウズベキスタン戦で得点を決めた柴崎にも言えることだけど、世代交代を進めるためにも今回のプレーで満足してもらっては困るし、まずは所属クラブで戦うアジアチャンピオンズリーグでしっかりと結果を残し、アピールを続けなければいけない。

組み合わせはまだ決まっていないけど、W杯2次予選はそれほど怖い相手もいない。ハリルホジッチ監督は今回同様、どんどん若手を使うべき。そして協会に「もっと強い相手と試合をしたい」とリクエストを出してほしい。そこでどういう戦いができるか。彼の手腕もわかるだろう。

いずれにしても、誰が監督だろうと、海外に出てもっとW杯やW杯最終予選と同じような厳しい環境や条件で試合をしないと強化にはつながらない。そういう意味で大きな宿題を抱えているのは、ハリルホジッチ監督ではなく協会といえるね。

(構成/渡辺達也)