今季もJリーグ勢がアジアでもがき苦しんでいる。
アジアチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ第4節が終わり、Jリーグで首位争いをしている浦和が1勝もできずにほぼ敗退決定。その他では柏こそ踏ん張っているものの昨年国内3冠(リーグ、天皇杯、ナビスコ杯)のG大阪と鹿島がまだ1勝しかできず各組最下位。決勝トーナメント進出に向けて“崖っぷち”だ。いずれにしても、今季もJリーグ勢の優勝は難しい。
確かに、他国のレベルは上がっている。中国勢は豊富な資金力で大物外国人をかき集めているし、自国リーグが盛り上がるオーストラリア勢にも勢いがある。また、タイやベトナムなどの新興勢も資金力の高まりとともに存在感を増している。
翻(ひるがえ)ってJリーグ勢はどうか。資金面にゆとりがなく、日本代表クラスの選手は次々と欧州に流出し、外国人選手も以前より小粒になった。また、リーグ側が出場チームに対して日程調整や遠征費補助などの支援を行なっているというけど、結局、今季も過密日程は解消できていない。そもそもACLは収入面での魅力に乏しいという大会自体の抱える根本的な問題もある。
でも、だからといって「ACLは負けても仕方ない」と諦めるくらいなら、もう来年は出場枠(3.5枠)をひとつ返上したほうがいい。
例えば、お隣韓国のKリーグ勢を見てほしい。彼らにも決して豊富な資金があるわけじゃない。日本同様に代表レベルの選手は欧州や中東に次々と移籍し、さらにその下のレベルの選手はJリーグに流出している。その穴を埋める外国人の質もJリーグ勢と変わらない。にもかかわらず、Kリーグ勢はACLで必ず結果を出している。ほぼ毎年ベスト4以上に1チームは残っている。
大きいのが選手を取り巻く環境の違い
では、この違いはどこから生まれるのか。まず大きいのはリーグ方式の違いだ。全18チームで優勝を争うJリーグに対し、Kリーグは全12チーム。一時期16チームまで増やしたけど、結局、縮小して12チームにした。チーム数が少なければ、代表クラスの選手が次々に海外移籍しても、残る選手はふるいにかけられ、リーグ全体の質もある程度保てるというわけだ。
僕は以前から何度も指摘しているけど、Jリーグ(J1)も一度、チーム数の見直しを検討すべきだろう。
そして、もうひとつ大きいのが選手を取り巻く環境の違い。韓国はメディアもサポーターも、日本よりもはるかに手厳しい。例えば、ブラジルW杯では両国とも1勝もできずに帰国したけど、日本の選手が空港で黄色い声援で迎えられた一方で、韓国の選手は飴玉を投げつけられた。また、Jリーグ勢はACLでグループリーグ敗退となっても監督の進退が取り沙汰されることはないけど、Kリーグ勢は監督も選手も猛烈な批判を受ける。
ACLでのJリーグ勢の負けパターンは、技術は互角以上なのに球際で相手に圧倒されるというのが大半。そういう現状を見ると、環境の違いがプレーに与える影響は無視できない。
国内リーグと代表チームはよくクルマの両輪にたとえられるけど、Jリーグや各クラブはもちろん、メディアもファンもACLを軽んじて「勝てなくても仕方ない」と放っておくと、後で手痛いしっぺ返しを食らうことになるよ。
(構成/渡辺達也)