山道を走り抜けるスポーツ、トレイルランニング

自然の中を行く爽快感が受け、この数年で愛好家が急増。国内の競技人口は10万人とも20万人ともいわれている。しかし、そんな“トレラン”に今、逆風が吹いている。

環境省は4月1日、国立公園内での「トレラン大会等は一般利用者の安全で快適な利用の妨げとなる」などとして「利用者数の多いルートの混雑期などは原則として大会などを開催しないように」と指針を出し、運用を始めた。

また、東京都も4月1日から高尾山などでのトレラン大会を「新緑シーズン、ゴールデンウイーク、紅葉シーズン、年末年始は原則回避」。そして「高尾山山麓から高尾山山頂。ランナーの渋滞が予想される登山道なども原則回避または徒歩」というルールを決めた。このルールを守れない場合は大会の中止を求めることもあるという。

こうした“トレラン規制”のきっかけのひとつになったのは、昨年の神奈川県鎌倉市での“トレラン規制騒動”だ。

鎌倉市でハイキングコースの見回りや整備をするボランテイア団体「ハイキングクリーン」が昨年2月、市議会に陳情書を提出。代表の御法川齊(みのりかわ・ひとし)氏が語る。

「鎌倉市のハイキングコースは道幅が狭いため観光客やハイカーが密集して歩いています。そこをトレイルランナーがすごいスピードで走り抜けていくととても危険です。接触したら大ケガをします。そこで、タイムレースの禁止や団体走行の禁止などを求めて条例化してもらうべく陳情しました」

問題多発の皇居ランより危険?

この陳情は議会に提出され採択された。しかし、それに反発したのが大会を運営する「NPO野外活動(自然体験)推進事業団」だった。

「『鎌倉トレイルラン大会』は一般ハイカーとの接触がない時間帯や安全ルールを設定して行なってきました」「公正な討論会をされることを依頼いたします」と昨年6月に市議会に要望書を提出。そのため“トレイル規制”はまだ条例化されていない。

鎌倉市役所観光商工課の山戸貴喜(やまと・たかよし)氏が説明する。

「条例化の前に他の解決策がないか考慮しています。陳情後、地元のトレイルランを楽しむ団体『鎌倉トレイル協議会』から自主ルールを作るという申し出がありました。そして現在、そのルールの周知徹底のためチラシを配るなどの啓蒙活動をしています。まずはその実効性を見極めているところです」

果たして、こうしたマナーは徹底できるのか。都内に住むあるトレラン愛好家が言う。

「ランニングと違ってトレランは道が細いし、カーブも多いので視野が狭くなるんです。だから、人とぶつかりそうになったことは多々あります。ハイカーの人を後ろから追い越す時は走らないで『すみません』と声をかけるというマナーはあるのですが、最近はレース志向の人が増え、自分でタイムを設定しているので、止まることなく相当なスピードで走り抜けていく人は多いですね。一時期、皇居ランナーが問題になりましたけど、状況はあれよりも危険だと思います」

ちなみに、皇居の周りを日常的に歩く人に千代田区がアンケート調査(昨年3月)したところ、皇居周辺を走るランナーに危険を感じたことがある人が54%いたという。「孫がランナーにぶつかってケガをした。区内の入浴施設もランナーが多くマナーが悪い」との声もある。

トレランvsハイカー。皇居ランナーvs歩行者。GWで人が集まる時期だけに、とにかく安全には注意してほしい。

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