欧州のシーズンもいよいよ大詰めを迎えている。今季も多くの日本人選手が各国リーグでプレーしたけど、残念ながら、ここ数年では明るい話題が最も乏しかった一年じゃないかな。

スタメンに定着できた選手が少なく、シーズンが進むにつれ、メディアへの露出はどんどん減った。攻撃的ポジションの選手で唯一、結果を出したといえる岡崎(マインツ)にしても、シーズン半ば以降は山あり谷ありで継続性に欠けた。いずれにしても、「さすが海外組。国内組とは違うね」という印象を誰も残せなかった。

特に、日本代表の二枚看板で今季の復活を期待されていた本田(ACミラン)と香川(ドルトムント)がパッとしなかったね。

本田は開幕戦から7試合で6得点と素晴らしいスタートを切ったものの、その後は見せ場をつくれずベンチを温めることも多かった。名門の10番を背負うだけに現地のメディアやサポーターから厳しい批判も受けた。

来季、ミランはおそらく監督が代わると思うけど、新監督、クラブが本田をどう扱うのか。そして彼自身はどう考えているのか。かつてヒデ(中田英寿)もローマ時代にレギュラーの座を奪えず、移籍を選んだ。当時よりもセリエAのレベルは下がったいとはいえ、本田も同じ壁にぶつかっている印象だ。名門クラブの攻撃的ポジションで継続的に結果を残すことの難しさを実感させられたね。

良くも悪くも話題性のある選手だし、ミランに残留してなんとか巻き返してほしいけど、どうなるのだろう。

国内組にとっては大きなチャンス

ドルトムントに復帰した香川も、以前の輝きを取り戻せなかった。これだけ長い間活躍できないと、もうスランプという言葉は使えない。日本代表でも目立った活躍を見せられなかったし、厳しい言い方をするなら、今の彼の実力はその程度ということ。日本代表でも特別扱いすべきじゃない。

ドルトムントも来季は監督が代わる。今季の香川の出来で、新監督がスタメンで使ってくれるかは微妙なところだろう。とはいえ、ブンデスリーガ下位クラブなどへの移籍は得策じゃない。香川が苦手とする守備の負担が増えるからだ。環境に慣れ、気心の知れたチームメイトのいるドルトムントで“背水の陣”で頑張るしかない。

海外組の苦戦は日本代表にとって大きなマイナスだけど、ポジティブな面もないわけじゃない。海外組がパッとしないあまり、Jリーグで結果を出し続けている旬の選手にメディアやファンの目が向き始めているからだ。最近は本田、香川よりも武藤(FC東京)や宇佐美(G大阪)のほうが露出は多いよね。やっぱり実際に活躍している選手のほうが魅力的に見えるのは当然だ。

そのふたり以外にも、大久保(川崎)がカズ(三浦知良)の記録(J1通算ゴール数)を抜いたことも話題になった。日本のメディアはすぐに海外組というブランドとスターをつくろうとするけど、さすがに今季の低調ぶりでは難しい。それにより、国内組に光が当たるようになったというわけだ。彼らにとっては大きなチャンスだ。

これを機に、海外組、国内組という枠組みなど関係なく、試合に出て結果を出している選手が評価され、日本代表のスタメンで使われる、そういう当然の競争原理が働くようになればいいし、ハリルホジッチ監督にもそういう選手選考、采配を期待したいね。

(構成/渡辺達也)