5月18日、フィギュアスケートの浅田真央(24歳)が現役続行を表明。
自ら座長を務めるアイスショー「ザ・アイス」の発表会見で「1年間休養してきたのですけど、自然と試合が恋しくなり、試合でいい演技ができたときの達成感をまた感じたいなと思い始めたのもひとつの理由です」と語った。
彼女の復帰は、日本フィギュア界すべてが歓迎するものである。以前、日本スケート連盟の小林芳子フィギュア強化部長はこう話していた。
「(2014年の)ソチ五輪後、『第二の浅田真央や第二の髙橋大輔はつくれますか?』とよく聞かれたけど、それは無理としか答えられませんでした。世界チャンピオンは選手やコーチの努力でつくれるかもしれない。でも、第二の彼、彼女は無理。生まれ持ったものに加え、共に大きな苦難を乗り越えて心身共に強くなった。そんなふたり以上に、その背中で後に続く選手たちにいろいろなものを教えられる存在はいません」
昨シーズンの日本女子フィギュアは、浅田の休養と鈴木明子の引退で危機が訪れるかと思われたが、結果は高校生の宮原知子(17歳)や本郷理華(18歳)の活躍で来年の世界選手権出場枠を3つ獲得。
さらに中学生の樋口新葉(わかば)(14歳)を筆頭とするジュニア勢の急成長で世代交代への道が見えた。
だが、若い彼女たちにとっての目標となり、技術的にも人間的にもお手本となる存在はまだ必要というわけだ。
とはいえ、不安要素もある。休養前最後の大会だった昨年3月の世界選手権で浅田は3度目の優勝を果たしたが、フリー演技では4つのジャンプが回転不足となり、ルッツはエッジエラーをつけられている。その回転不足とエッジエラーについて、彼女が休養していた昨シーズンから、より厳しくジャッジされるようになっているのだ。
さらに、来シーズンからは浅田にとって不利に働きそうなジャッジ基準の変更も噂される。
それでもマイナス材料はない!
浅田が会見で「最低でも去年の世界選手権のレベルまで戻さないと試合には出られないと思っている。そのレベルまで戻すのが今の目標」と慎重に話したのも、そのルールへの対応という課題を意識しているからだろう。
ただ、その道は平坦(へいたん)ではないものの再びトップに返り咲く可能性は十分にある。銀メダルを獲得した10年バンクーバー五輪後、それまでのプライドも技術もすべて捨て、滑りやジャンプを基礎からつくり直して新たな浅田真央になろうとしたことに象徴されるように、常に人一倍の努力を惜しまない性格の持ち主だからだ。
元国際審判員の杉田秀男氏もこう期待する。
「(浅田の)佐藤信夫コーチもソチ五輪当時、『技術改良はまだ完成途上』と話していたように彼女の本当の完成はこれから」
ブランクも1年だけならまだまだ体も動く。復帰に触発された若手がさらなる成長をすれば、それもまた彼女には大きな刺激になるはずだ。1年間の休養で精神的にもスッキリした浅田の大きな可能性を秘めた再挑戦は、強い日本女子フィギュア再建への起爆剤になる。
(取材・文/折山淑美 撮影/村上庄吾)