パワーユニットの信頼性不足に悩まされ続けているマクラーレン・ホンダが、今シーズン最大のチャンスとされたモナコGPで結果を出した。
■低速のモナコは最大のチャンスだった
F1今季第6戦、モナコGPでジェンソン・バトンが8位入賞。マクラーレン・ホンダが待望の今シーズン初ポイントを獲得した。レース終了後にバトンはこう語った。
「チームにポジティブな結果を残せたことがとても嬉しい。今日はなんとしてもポイントを取りたいと思っていたけれど、8位入賞で4ポイントというのは期待以上の結果だ。これまで懸命に努力を重ねてきたチームを誇りに思うよ!」
今年からマクラーレン・ホンダとしてF1復帰を果たしたホンダだが、開幕前のテストでは開発したパワーユニット(1.6LのV6ターボエンジンとMGU-K、MGU-Hという2種類のエネルギー回生装置に電気モーターを組み合わせたハイブリッドエンジン)にトラブルが続発し、ほとんどマトモに走れないままの状態でシーズンに突入した…。
F1きっての名門チームであるマクラーレンと23年ぶりにタッグを組み、フェルナンド・アロンソ、ジェンソン・バトンというふたりの「元F1世界チャンピオン」を擁しながら開幕以来、非常に苦しい戦いを強いられてきた。
それだけに今回の8位入賞とポイント獲得は、チームに重くのしかかるプレッシャーを和らげ、スタッフの士気を高める上でも大きな意味を持っているといえるだろう。
ちなみにバトンは土曜日の予選で1分17秒093と、予選上位10台で争うQ3進出までわずか0.1秒差と迫っていた。バトンは「Q2終盤のイエローフラッグさえなければQ3に進出できた…」と悔しさをにじませたが、それをバネに決勝では今シーズン最高のパフォーマンスを発揮した。
また、アロンソも14番手スタートから着実にポジションを上げ、ポイント圏内を走行していた。残念ながらギアボックストラブルで41周リタイアに終わったもののバトンと2台そろっての入賞を期待させる走りを見せた。
予選からは想像もできない結果に
第4期ホンダF1を率いる新井康久F1プロジェクト総責任者は次のように話す。
「予選Q3のトップと我々のタイムとの差が約2秒あった。そのペースで決勝レース78周を走ったら計算上は周回遅れになっても不思議はなかったのですが、レースでは上位勢と遜色のないタイムで走ることができた」
さらに「モナコはエンジンの全開率が低いので、スロットルの中間開度から低速の部分での出力特性をきちんとまとめることが重要なのですが、ジェンソンの安定したペースを見れば、その部分のドライバビリティを向上できたと言っていいでしょう。
開幕前のテストの厳しい状況を考えれば、6戦目でのポイント獲得は遅すぎたとは思いませんが、同時に(これまで)失った時間がかなり大きいことも自覚しており、ファンの皆さんの期待にまだまだ応えられていないこともわかっています。
今回、ポイントを取れたことは素直に嬉しいけれど、我々はこのポジションを目指して戦っているわけではないわけですから、これからもっともっと上を目指したい」とレース後に語り、その表情にも心なしか安堵(あんど)の色が浮かんでいた。
ホンダがタッグを組む相手、マクラーレンチームのエリック・ブーリエ代表は、今年の開幕戦オーストラリアGPのパドックで「シーズン序盤の出遅れをなんとか5月のヨーロッパラウンドまでに取り戻したい」と語っていた。そして中でも、低速市街地コースのモナコGPはホンダエンジンのパワー不足に悩まされてきたマクラーレンにとってシーズン前半最大のチャンスだと目されていた。
結果的に、今回のモナコGPではその予想通りになったワケだが、果たしてマクラーレン・ホンダは今回のポイント獲得をきっかけに攻勢へと転じ、近い将来、メルセデスやフェラーリ、レッドブルといったライバルと互角に戦い、優勝争いの一角に食い込めるようになるのだろうか?
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