前人未到の6度目のW杯(ワールドカップ)。それは、最後のW杯ーー。
日本代表に初選出されてから20年余り。いかなる時も日本女子代表は澤穂希(ほまれ)とともにあり、澤穂希こそがなでしこの「魂」であり「象徴」だった。
W杯初制覇、FIFA女子最優秀選手賞獲得、ロンドン五輪銀メダル…。数々の偉業を成し遂げた偉大なる挑戦者の伝説に、また新たな一歩がしるされる。その6度目となるW杯代表メンバー選出で今、何を思うのか?
6月8日発売の『週刊プレイボーイ』25号で表紙を飾った彼女をキャスターの山岸舞彩が直撃インタビュー。澤穂希のサッカー人生に迫った。
山岸 今、あの前回のW杯の優勝から4年も経つんだ、ということに驚いている自分がいます。
澤 そうですね、もうあっという間に過ぎたという気もするし、4年って長いなという気もするし…でもどちらかといえば短かったです。
山岸 あれから澤選手の中ではどんな変化がありました?
澤 去年の一年間は代表からも離れていて本当に悔しい思いもしたけど…結果としてはその一年があったからまた自分を奮い立たすというか、また頑張らなきゃいけないなという気持ちと、また日の丸を背負って青いユニフォームに袖を通したいなという気持ちにもなりましたし、何か初心に帰れたかなという気もするので、決して無駄な一年ではなかったと思います。
外から見て「自分だったら今、どういうプレーをしていたかな」とか、そうやって初めて気づくことも多かったです。
山岸 そして、あらためて日本代表に選ばれました。6度、W杯に行く選手は男女を通じて澤選手が初めてです。
澤 サッカー選手であれば誰でも目標とするのがW杯だと思うので、やっぱり特別な大会です。行きたくても行けるわけじゃないですし、行くからには結果を出さないといけないですしね。
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若い選手には散々もう伝えてきたつもり
山岸 でもすでに5回も出場して、前回大会はチームを優勝に導いて、しかもMVPやFIFA女子年間最優秀選手賞まで獲って「もうこのあたりでやめよう」とは思わなかったんですか? だって、戦い続けるほうがずっとつらいことですよね。
澤 よく聞かれるんですけど、もう満足することはないなって。あとはもう、納得したいだけなんです、自分の中で。なので、せっかく現役でやっている間は目標を 高く持ちたいし、人間だからちょっと欲も出るし、もっともっとうまくなりたいし。もっともっとそういう最高の舞台でプレーしたいという、そんな思いです。
山岸 そして今回が、最後のW杯と公言されています。
澤 そうなると思います。
山岸 この大会で、納得できるはず、ということですね。若い選手に伝えたいことなんかも…。
澤 散々もう伝えてきたつもりですからね(笑)。感じてもらえたらいいなと思います。もうこれ以上伝えられることはないです。というか、そういうのって自分からじゃないと身にならないじゃないですか。
山岸 澤選手も新人だった頃は…。
澤 やっぱり上のお姉さんたちのところに真っ先に行って、いろいろな話を聞いたりボールを一緒に蹴ってもらったりしていましたね。10代の頃は試合に出たくて出たくて、アップでもいつも先頭を走ったり…普段しないくせに(笑)。練習で自分が納得いかなかったら、ひとりでボール、泣きながら蹴ってました。もっとうまくなりたい、今日は全然できなかった、小さい時からそんなことばっかりでした。
でも、どうですか? 山岸さんもそうじゃなかったですか?
言われてやっているうちはダメ
山岸 確かに、テレビ朝日でお天気キャスターをやり始めたときは…私、フリーなんですけど、テレ朝の優しそうなアナウンサーさんをとっつかまえて、自分が他局でやった放送のDVDを焼いて「一緒に見てダメ出ししてください」とかやってましたね。
澤 ね? 今、そういうコは少ないというか、いない気がする。遠慮しているのか、そういう時代なのか…。
山岸 若い人が淡泊だって話はよく聞きますよね。ちょっと違うかもしれないけど、上司に「飲みに行くぞ」って言われてもいつも断るみたいな。同じ事務所の後輩でも「教えてください」ってくるコはほとんどいないです。
澤 所属しているINAC神戸でも、名前出てこないですね。私たちの場合、やっぱりアピールっていうのも大事なわけじゃないですか。プロでやるために、スタメンをとるために練習中にガツガツ削り合ったりすることも必要なんです。監督からこういうことをやれって言われた通りにやるだけじゃあ、試合になんて出られないんですよ。
だから、言われてやっているうちはダメなんです。自分からやらなきゃ何も成長しない。自分で気づかなきゃ何もわからないんですよ。
●このインタビューの続きは『週刊プレイボーイ』25号にてお読みいただけます!
(取材・題字/山岸舞彩 撮影/松井英樹)