C大阪(J2)の元ウルグアイ代表FW、ディエゴ・フォルラン(36歳)が6月8日、自身のツイッターで7月末の契約満了をもって退団することを発表。

これに先立つ6日、C大阪の玉田稔社長はフォルランについて「うちの体力(資金)の問題もあり、現状の条件では契約延長は難しい」と語っており、退団は既定路線だった。今季のフォルランの契約は半年で3億円という破格の条件。現在10得点とJ2最多タイとなるゴールを挙げているものの投資額に見合わないと判断されたようだ。

昨春の入団時は、J1初制覇への切り札と注目を浴びた超大物。しかし、チームは開幕から極度の不振に陥り、シーズン中に2度の監督交代を行なった挙句、まさかのJ2降格。そしてフォルラン自身もリーグ戦計7得点と、期待されたほどゴールを量産できなかったばかりか、リーグ中盤戦以降はスタメンに名を連ねることもなくなり、さらに残留のかかった終盤ではベンチ入りすらできなかった。

結局のところ、フォルランは評判倒れのロートルでしかなかったのか…? いや、断じてそうではない。昨年、今年と、フォルランの出場試合を幾度となく取材してきた、サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏が言う。

「この1年半で彼は実力の程をしっかり見せましたよ。J1も含めた今の日本のサッカー界には絶対いない、とんでもないレベルの選手であることは間違いありません」

では、どこがスゴいのか?

「動きだしのタイミングとスピードです。自陣側を向いてぶらぶらしていたと思ったら、突然ターンして前に走りだすときの加速力。日本人であの爆発的な速さについていける選手は誰もいません。いくら年を取ったとはいえ、依然として世界のトップクラス。彼のプレーを見るだけでも、入場料の元が取れるほどでした」(後藤氏)

ならば、なぜゴールという結果が伴わなかったのか。

フォルランに合わせられるのは山口だけ

「フォルランの動きに敵だけでなく味方選手もついていけなかったのです。せっかく絶妙なタイミングで動きだしても、その決定的な瞬間を周囲が感じ取れない。しかも加速がスゴいので、遅れてパスの出し手が気づいても、走った彼の後ろのスペースにパスを出してしまい、チャンスが潰(つぶ)れる場面がどれほど多かったか…」(後藤氏)

ただし、例外的な選手がひとりだけいた。

「山口蛍(現・日本代表MF)だけはフォルランの動きを察することのできる感覚と彼のスピードに合わせて長く正確なボールを蹴れる技術を持っているので、ふたりの仕掛けで何度も決定機をつくれていました。でも山口しかフォルランに合わせられないのでは、せっかくの才能を輝かせることなどできません。つまり味方選手も、そして去年に限っていえば指導者も彼を生かせるレベルになかった。それがフォルランにとっての悲劇でした」(後藤氏)

スペイン紙の報道によると、すでに彼と母国の強豪ペニャロールとの移籍交渉は大詰めに差しかかっているという。

「日本サッカー全体のためにも資金力と実力のあるJ1クラブが獲得に動いてくれればいいのですが」(後藤氏)

Jリーグ唯一のワールドクラスを、みすみす帰してもいいのか?