プロ野球のレジェンドプレイヤーも続々と独立リーグ入り!

まさか藤川球児(34歳)が古巣・阪神からのオファーを蹴り、独立リーグ入りを選ぶとは! 

そこで、NPB入りして活躍する選手が出てきたり、逆にNPBで実績のある選手が国内外から相次いで入団するなど注目度がUPしている独立リーグの実情に迫ってみると…。

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阪神の守護神として活躍し、2013年にメジャー挑戦した藤川球児が独立リーグ「四国アイランドリーグplus」(以下、四国IL)の高知へ電撃入団。6月8日に行なわれた入団会見には100名以上の報道陣が殺到し、20日にはオープン戦に先発登板し初お目見え、多くの観衆が押し寄せた。

その独立リーグについて、なんとなく存在は知っているけど、詳しくは知らないという人も多いはず。だが最近では藤川以外にもNPB(日本野球機構)で実績を残したレジェンド選手が相次いで加入するなど、実はかなりアツいのだ!

現在、日本には藤川の加入した四国ILと、もうひとつ「ルートインBCリーグ」(以下、BCリーグ)のふたつがある。

05年に発足した四国ILは4チーム(高知、愛媛、香川、徳島)で構成され、前後期計68試合とチャンピオンシップで優勝を争う。

一方、07年に発足したBCリーグは8チーム(福島、武蔵、群馬、新潟、信濃、富山、石川、福井)が2地区に分かれ、それぞれ前後期計72試合、73試合とプレーオフを行なって優勝を決めている。

Webサイト『独立リーグドットコム』の寺下友徳編集長が両リーグ設立の経緯を語る。

「NPBはもちろん社会人野球にも進めなかった選手の受け皿として、またNPBを戦力外になった選手の再挑戦の場として設立されました。潜在能力は高いもののNPBのスカウトが見つけ出せなかったような選手も、独立リーグで実戦経験を積んで活躍すればNPBからドラフトで指名されるかもしれない。実際、最近ではそんな選手が毎年出ていますね」

確かに、四国ILからは12年にパ・リーグ首位打者を獲得したロッテの角中(かくなか)勝也(元高知)や中日で頭角を現した又吉克樹亀澤恭平(ともに元香川)など、その後チームに欠かせない戦力となっている選手は多い。まさにジャパニーズドリーム!

NPB経験者の多いBCリーグの実力は?

一方のBCリーグも、今年からNPB入りして活躍中のオリックスのカラバイヨ(元群馬)やヤクルトのデニング(元新潟)などがいた。

それだけNPBで活躍する選手が増えているということは、実は両リーグともレベルは相当高くなってるってこと?

「四国ILについていえば、NPBでもやれる潜在能力を持った選手は少なからずいます。ただ、全体のレベルは社会人野球より下ですね。というのも、今年初めて香川が社会人野球の四国大会に参加したのですが、健闘はしたものの3戦全敗に終わっています。特に打者のレベルの差が目につきました」(寺下氏)

BCリーグについては、産経新聞記者で独立リーグを取材し続ける喜瀬雅則氏が語る。

「NPBの二軍と交流戦を行なって、そこそこいい勝負はしています。でも、四国ILに比べるとややレベルの低い印象。NPBに行く人数もBCリーグのほうが少ないですしね。そうした状況や気候の違いもあり、最近は独立リーグのどちらに行くか迷っている選手が四国ILを選ぶケースが増えています」

とはいえ、BCリーグには元NPB選手も多い。

「四国ILは選抜チームを組んで北米遠征を行なったり、米マイナーで生き残れなかった欧州出身の選手が多く在籍していたり、リーグ全体で国際化を進めています。一方、BCリーグには国際化を進めるよりも、まずは地元にしっかり根づいた運営をしたいと考えているチームが多い。単なるスポンサー対策というわけではありませんが、話題性や集客力のある元NPB選手が多いのはそうした背景があるからです」(喜瀬氏)

独立リーグ選手の報酬は?

給料面も気になる。プロとはいえ、藤川が無報酬契約を結ぶくらいだから、なんとなく予想はつくが…。

「両リーグとも『日本独立リーグ野球機構』という統括組織に加盟しているため、給料面の基本的な体制はほとんど変わりません。上は月給約40万円、下は月給数万円。ただし、成績が悪いと練習生に落ち、無給になってしまいます。そうなると大変ですね。だから、オフの間のアルバイトで生活費を貯めたり、親から仕送りをもらう選手も多いです」(寺下氏)

やはり、選手のプレー環境は甘くない。両リーグとも平均観客動員は1千人に満たず、各チームの年間運営資金は1億円程度というから経営もラクではないようだ。

「ただ、低予算でのやりくりだからこそのメリットもあります。例えば、5月にBCリーグ・新潟のデニングがヤクルトへ移籍しましたよね。その際、移籍金が発生するんですよ。数百万円とか。新潟にすればなかなかの収入です。また、NPB側にとって気軽に獲得できる金額だからこそ独立リーグで活躍すればNPB復帰のチャンスがあると見込んでプレーする大物選手もいるわけです」(喜瀬氏)

さらに、今回の藤川加入が独立リーグにとっては追い風になるという。

「大物の藤川やローズ(富山)の独立リーグ入りが注目を集めたことで、今後、他の大物選手や欧州やアフリカなど野球後進国の有望選手が外国人枠のない独立リーグに集まってくる可能性があります。正直に言うと、発足当初はこんなリーグを作ったら〝半分ニート〟のような選手をたくさん生み出すだけではという懸念もありました。

でも、これまでの両リーグの努力の甲斐もあり、NPBに多くの選手を送り出し、野球を諦めきれない選手の受け皿としてしっかり機能している。とてもいい状態だといえます」(喜瀬氏)

さらなるレジェンド選手の加入もある!? というわけで、一度足を運んでみては?

(取材・文/武松佑季、昌谷大介【A4studio】)