まさかの結果だったね。2018年ロシアW杯のアジア2次予選が開幕し、日本は格下シンガポール相手にスコアレスドローというスタートを切った。
よく「W杯予選に簡単な試合はない」「初戦は難しい」などというけど、体格面でも技術面でもシンガポールとは明確な差があった。しかも5日前の親善試合では、シンガポールよりもはるかに強いイラク相手に4-0で快勝していた。それだけに僕にとっても、この展開は予想外だった。
確かに、シンガポールはイラクよりも守備に人数を割いてきた。日本の実力を認めた上での割り切った戦い方だ。球際でよく頑張っていたし、GKも当たっていた。
でも、それを差し引いても日本には余裕がなさすぎた。試合の立ち上がりから何度もチャンスをつくったけど、それを決められないうちに徐々に慌ててしまった印象だ。23本もシュートを打ったけど、どれも力みすぎ。GKの真正面や枠外に飛んだものも少なくなかった。
前半はハリルホジッチ監督の掲げる「縦に速いサッカー」の意識が強すぎて、裏にスペースがないのにロングボールを蹴ったり、相手DFの人数が多い中央に強引な縦パスを入れてははね返された。
ハーフタイムに指示があったのか、後半に入るとサイドを使ってクロスを入れるようになったもののあまりにも単調。壁パスを使って崩すような場面は少なく、相手からすれば守りやすかっただろう。
言われたことは一生懸命にやる。でも、それ以上のことはできない。今に始まったことじゃないけど、それが日本の選手の課題。そういう意味で、高校サッカーの先生みたいに選手を仕切るハリルホジッチ監督の影響が今回はマイナスに出てしまった。選手たちが常に監督の顔色を窺いながらプレーしているように見えた。せっかくの大舞台、もっと思い切ってプレーしてほしかったね。
宇佐美と柴崎には合格点をあげられない
まあ、まだ2次予選の初戦だし、監督が代わったからといって急に強くなるわけではない。今後に向けてのいい薬になればいいと思う。
選手個人で注目していたのは、ハリルホジッチ監督の就任以降、代表での存在感を増している宇佐美と柴崎だ。残念ながら、この日のプレーぶりではふたりに合格点はあげられない。
宇佐美はチャンスに決め切れなかったのはもちろん、イラク戦で見せていた個で仕掛けるプレーをあまり出せなかった。まだ本田や香川など先輩たちへの遠慮があるのかな。それともW杯予選の緊張があったのだろうか。いずれにしても、代表のレギュラーとして生き残るには常に自分の色を出さなければいけない。G大阪ではあれだけ自由にやっているのだから、代表でも同じようにやればいいんだ。
柴崎も目立たなかったね。やはり縦に速くという意識が強すぎたのか、パスの強弱があまりなく一本調子になっていた。ワンツーを使って抜け出すような場面も少なく、攻撃面で効果的な役割を果たせなかった。“ポスト遠藤”と期待を集めているけどゲームコントロールに課題を残したね。
もちろん、これで2次予選が終わるわけではないし、ふたりには今後もアピールのチャンスはあるはず。次こそは「これから俺たちが日本代表を引っ張っていく」というくらいの活躍に期待したい。
(構成/渡辺達也)