「前後期2ステージ制」+「ポストシーズン(チャンピオンシップ)」を導入したJリーグの1stステージを浦和が制した。無敗での優勝決定は素晴らしいし、まずはおめでとうと言いたい。

今季の浦和は決して盤石のスタートを切ったわけじゃない。ケガ人が多く、新加入選手もフィットしきれず、リーグ開幕前にはアジアチャンピオンズリーグ(ACL)、ゼロックス・スーパー杯と公式戦3連敗。ブーイングをするサポーターに対し、主将の阿部が涙ながらに勝利を約束する場面もあった。

でも、そこからよく盛り返したね。あのブーイングが刺激になったのかもしれない。結局、ACLでは結果を出せなかったけど、リーグ戦では見る者に気持ちが伝わるような気迫あふれるプレーを続けた。

昨季の浦和は、強引に攻めようとしてチーム全体が前がかりになったところで逆にカウンターを食らうパターンが多かった。ところが、今季はボールを失ってもすぐに奪い返すなど攻守の切り替えが格段に早くなった。球際の守備も激しく、粘り強く、G大阪戦では宇佐美を孤立させ、FC東京戦でも武藤に仕事をさせなかった。自分たちのサッカーを90分間やり通すのではなく、相手の力を認め、ストロングポイントを消しにかかる。そこが大きく変わった部分だと思う。

個々の選手を見ると、阿部、柏木、槙野らの主力がしっかりと自分の役割を果たし、存在感を発揮した。

中でも、印象的だったのがエースの興梠のプレーだね。ケガから復帰してからは最前線でボールが収まり、“浦和のサッカー”ができるようになった。昨季終盤に失速して優勝を逃したのも彼の故障離脱が主因。チームに必要不可欠な選手だ。

2ステージ制には違和感

そして、意外だったのは武藤の活躍。失礼ながら、新加入選手の中でもそれほど注目度は高くなかったはず。ところが、ゴール前に入ってくるタイミングが絶妙で、スピードもあって守備もサボらない。浦和のスタイルにハマってブレイクした。4戦連続ゴールを決めた時期には、日本代表に呼んでほしいと思ったほどだ。

ステージ優勝したとはいえ、選手もサポーターもそれほど浮かれていないのは頼もしい。年間勝ち点1位、そして年間優勝を達成してこそ“真の王者”ということをよく理解している。今季の浦和ならその可能性は十分あるし、ぜひそこを目指してほしい。

ただ、決して簡単なことじゃない。無敗優勝といっても、広島など2位以下に大差をつけたわけじゃないし、今後、無敗が途切れた瞬間に気持ちが切れることもある。過去の2ステージ制時代でも、前後期制覇を達成できたのは2002年の磐田と03年の横浜Fマだけ。そういう意味では、2ndステージ3節目の広島戦が試金石となる。浦和が勝ち点3を奪えるかに注目だ。

最後に、2ステージ制については、あらためて違和感を覚えた。熱心なサッカーファン以外は仕組みを理解できていないし、優勝決定後の盛り上がりもイマイチ。メディア露出も増えた感じはない。選手もメディアもファンも、誰もが「ステージ優勝は本当の優勝じゃない」と思っているのだから当然だ。村井チェアマンが表彰式で浦和サポーターから大ブーイングを浴びていたのは象徴的。果たして、シーズンが終わったときに、皆がどんな感想を抱くのだろう。今から不安だね。

(構成/渡辺達也)