「いきなりラミちゃんが監督候補に浮上したけど、どうなってるのかね。ムチャクチャだね、あそこは(苦笑)」
パ・リーグ某球団の関係者は、あきれ顔でそう言う。
昨オフ、合計40億円ともいわれる巨額の補強費を投じて中島、ブランコ、小谷野(こやの)、バリントンなどを獲得したオリックス。エース金子もFA残留し「監督が目をつぶっても優勝できる」(パ某球団関係者)というほどの前評判だった。
ところが、いざ開幕すると大物選手たちが次々と故障し、まさかの最下位独走。6月2日には森脇監督の休養が発表された。これは事実上の解任で、オリックスは2000年以降、実に9度目の監督交代となる。
「故障は仕方ないけれど、それでもチームをどうにか勝たせていくのが監督の仕事。森脇前監督はやりくり上手ではなく、むしろ守備コーチなどが肌に合う職人タイプだったから、その点は不幸だったよね」(パ某球団関係者)
いずれにしても、2000年以降の14年間でAクラスはわずか2回。最後に優勝したのはイチローや田口らが主力だった1996年だから、長い長い低迷だ。
「今年のように選手が粒ぞろいでも勝てないのは結局、球団フロントも含めて一丸となれない事情があるから。その元凶は04年オフの球団合併。あれ以来、球団上層部はオリックス生え抜き派と旧近鉄派に分かれ、最近ではさらにソフトバンクやロッテ、楽天からも幹部を引き抜いている。もはや誰がチームづくりを主導しているのか内部でもよくわからないらしい」(パ某球団関係者)
そして、彼ら球団幹部がいくらプランを練っても最終判断を下す権限を持つのはただひとり。日本有数の企業経営者でもある宮内義彦オーナーだ。
「イチロー監督待望論」の真意は?
宮内氏は野球好きとして知られ、熱心さは自他共に認めるところだが、それだけに「二軍のコーチ人事まで許可が必要」(オリックス関係者)なほど現場に口を出す。そして結果が出なければ、監督だろうがコーチだろうが、悠長に待ってはくれないのだという。
「今回、アレックス・ラミレス氏が巡回アドバイザーとして球団入りしましたが、財界関係者からの口添えで宮内さんが直接会い、得意の英語で話して招聘(しょうへい)を決めたそうです。『寝耳に水』と驚く球団幹部も少なくなかった(苦笑)。すべてはオーナーの意思ひとつですからマスコミがラミちゃんを“次期監督候補”と騒ぐのも無理はありません」(スポーツ紙デスク)
ところで、オリックスではチームが低迷すると必ず噴出するのが「イチロー監督待望論」。宮内オーナーの胸の内は?
「時期はともかく、宮内さんがイチローをいつか呼び戻したいと考えているのは間違いない。だから我々も『待望論』を書くんです(笑)。今年のメジャーでの活躍を見る限り、来年すぐには難しいでしょうが、宮内さんが本気にさえなれば可能性は十分にあるでしょう。
ある球団関係者によれば、『ウチのチームは合併前も後も結局、あの人のオモチャ』だそうですから(苦笑)」(デスク)
どうせなら、最高に楽しいオモチャにしてほしいなあ…。
(取材・文/本誌野球班)