Jリーグの歴史を振り返ると、鳴り物入りで入団しながら、期待を裏切った大物外国人は何人もいる。

例えば、2000年に鹿島に加入した元ブラジル代表FWベベット。1得点しか決められず、わずか4ヵ月で退団している。活躍できなかった理由はひとつではないけど、彼の場合は家族が日本の生活になじめず、それが彼自身のストレスにもなっていた。具体的には、ベベットの奥さんはイタリア料理作りが趣味なのに当時の鹿島では食材を手に入れるのが難しく、毎日ベベットが慰めていたそうだ。

1995年に柏に加入した現役ブラジル代表FWミューレルも奥さんがホームシックになり、ほとんど活躍できないまま1シーズンもたずに退団した。

日本をナメていたのは95年、96年と清水でプレーした元イタリア代表FWマッサーロ。故障で練習を休んでいる間に、チームに内緒でF1日本グランプリを見に行っていた。彼は時折スーパープレーを見せてくれたけど、やはり故障がちでシーズンを通しては働けなかった。

他にもリネカー(名古屋)、イルハン(神戸)、ワンチョペ(FC東京)など名前を挙げればキリがない。

そこに新たに名前を連ねることになったのが、C大阪(J2)の元ウルグアイ代表FWフォルラン(36歳)だ。6月22日にチームを退団し、ひっそりと帰国の途に就いた。

10年南アフリカW杯の得点王&MVP、スペインリーグで得点王になったこともある。そんな世界屈指のストライカーが日本にやって来たのは昨年春。Jリーグでは久しぶりの大物外国人として大きな注目を集めた。僕も彼がJリーグを活性化してくれると楽しみにしていた。

ところが、フタを開ければ、コンディション不良で出遅れ、チームともなかなか噛(か)み合わず、期待されたほどの結果を残せなかった。J2で迎えた今季こそコンスタントに得点を決めるようになったものの6億円という年俸を考えれば、やはり物足りなかった。

C大阪のチーム状況が悪すぎた

C大阪に詳しい記者に聞くと、彼は謙虚な性格で日々の練習にも真摯(しんし)な姿勢で取り組んでいたそうだ。家族も日本での生活を楽しんでいた様子。それなのに、なぜ活躍できなかったのか。

ズバリ、C大阪のチーム状況が悪すぎたね。僕はフォルランが他のチームでプレーしていたら、もっと得点を取っていたと思う。

昨季のC大阪は監督人事になんの一貫性もなかった。初優勝を目標に掲げながら、これといった実績のないポポヴィッチを新監督に迎え、結局、結果を出せずに早々と解任。その後もシーズン中に2度も監督交代を行なった。監督が代われば、チームが目指すサッカーも変わる。フォルランに限らずC大阪の選手にとっては厳しい状況だったと思う。

しかもその間にエースの柿谷(バーゼル)も放出して戦力ダウンしている。フロントの姿勢は、本気で優勝を狙うチームのそれとはかけ離れていた。一昨季までチームを率いていたクルピは素晴らしい監督だったし、彼が指揮を続けていれば、フォルランも違った印象を残せたのではないか…。なぜ、クルピとの契約を延長しなかったのか。今でも不思議だ。

フォルランが活躍できなかったことで今後、Jリーグの他のチームが大物外国人獲得に消極的になりそうで心配だね。

(構成/渡辺達也)