今年のオールスターファン投票では両リーグ最多得票を集めた西武の2年目・森友哉(19歳)。

10代の選手が最多得票で選ばれたのは史上初の快挙で「パ・リーグの指名打者部門」で約54万票を獲得。高卒2年目ながら柳田(やなぎた・ソフト)、中田(日本ハム)、筒香(つつごう・DeNA)らを抑えての両リーグ最多得票は立派のひと言。

そして、第二戦では清原和博(当時、西武)以来という10代の本塁打を、しかも代打で放ち度肝を抜いた。その豪快なフルスイングと、どことなく漂う「昭和のパ・リーグ」の薫りが今、プロ野球ファンを魅了し注目度を増している。

「今季は開幕から指名打者としてレギュラー出場。ここまで打率292、打点45、ホームラン13本(7月20日現在)と好成績を残し、5番に定着。もはやチームの主軸といっていい存在に成長しました」(スポーツ紙デスク)

そんな森の代名詞といえば、「見るだけで球場に行く価値がある」といわれる豪快なフルスイングだ。

「公称170cm、80kgと、プロとしては小柄な体形ですが、膝を深く折り曲げた極端に低い構えからの体がねじ切れんばかりの豪快なフルスイングが持ち味です。あれだけ振れる選手はなかなかいませんし、どのコースもフルスイングできるのも彼の強みです」(スポーツライター)

豪快なフォームにばかり目がいきがちだが、その打撃技術は「天才的」「技巧派」というのが球界関係者の一致した見立てだ。

「彼は基本的に配球をまったく読まないんです。『ヤマを張って違うところにきたら全然打てないので、自分はストライクを積極的に振っていく』と話していますが、それであの成績ですから打撃センスは天才的としかいいようがない。しかもまだ高卒2年目ですから末恐ろしい。一説には配球を読まないのではなく、読めないというウワサもありますが(苦笑)」(前出・スポーツライター)

「弱点らしい弱点がない。インコースは引っ張れるし、アウトコースは流せる。ホームランバッターではないけど非常に巧いバッターです。本人は打率を一番重視しているみたいだけど、確かに首位打者のほうが近いかもしれない」(パ・リーグ球団関係者)

昭和すぎる?ヤンチャ伝説

森は昨年、対左投手の打率が167と苦手にしていたが、今年はここまで4割超えと、劇的な進化を見せている。

「自分の打席のところで左投手をぶつけられることについて森は『僕のところでピッチャーが代わるってことは、それだけ僕を抑えたいってこと。でも、そこで打てば流れはこっちに来るから絶対打ってやろうという気持ちが強くなりますね』と語っていました。その堂々たる語りぶりは、とても高卒2年目とは思えません」(西武番記者)

豪快なフルスイングと天才的な打撃。加えて、ファンを魅了してやまないのは彼から漂う「昭和のパ・リーグ」の薫りだ。

「DeNAのルーキー、山崎が“小さな大魔神”と話題になりましたが、それよりも先に西武の田辺監督が『小さい門田さんみたい』と言ったのが森でした。今やすっかり死語となった“豆タンク”体形でフルスイングする姿は、元南海の門田博光氏を彷彿(ほうふつ)とさせます。門田、中村ノリ、小笠原と受け継がれ、その後、断絶してしまっていたパ・リーガーの正統後継者の登場に往年のファンがザワついてます」(スポーツライター・村瀬秀信氏)

森といえば以前、ネットに特攻服を着た画像が流出したり、中学時代から飲酒していたとの都市伝説が噂されたようにプロ入り前は相当ヤンチャだったとも。お行儀のいいアスリート的な選手が増えた昨今の球界では異色の存在といえる。

「昨年もルーキーでいきなり茶髪にしたかと思えば、ネックレスは金ピカ。運転免許試験には3度落ち、それでも『欲しい車はベンツ』と言い放つなど完全に昭和の野球人です(笑)。ちなみに好きな芸能人は蜜です」(前出・番記者)

何事にも動じない性格と肝の据わった言動には、記者たちも「とても19歳には思えない」と口をそろえる。

「普通、あの年の選手が試合に出ると、ベンチや首脳陣の顔色を見て野球をしてしまうものだけど、森にはそんなところがまったくない。とにかくマイペースです。マスコミ対応も実に大人びていて、たまに批判記事が出ても『書きたいように書いてくれればいいです。結局、他人が書いていることなんで、自分にはまったく関係ないですね』と意に介さない。その落ち着き払った様子にはすごみすら感じます。“そのスジ”でもやっていけたのでは、と思わせるほどの雰囲気です(笑)」(前出・スポーツライター)

大物感が際立ったガン飛ばし事件

そんな森がまざまざとパ・リーガーの片鱗(へんりん)を見せつけたのが7月3日のロッテ戦。死球を受けた森は、相手投手にまさかのガン飛ばし。これにはロッテ首脳陣がベンチから飛び出し、あわや乱闘騒ぎとなるところだった。

「最近は侍ジャパンなどで選手同士が仲良くなり、乱闘が少なくなる中、2年目にして見せたあのガン飛ばしで球場の空気は一変しました。あらためて森の大物感が際立ちました」(前出・番記者)

今後はチームの顔としてだけでなく、同世代の大谷(日本ハム)や松井(楽天)らとともにパ・リーグの顔としての活躍も期待される。

「今年、松井の全球ストレート勝負にフルスイングで三振した森が、『やるな』とばかりに笑みを浮かべたシーンは久しぶりに身震いしました。かつての村田vs門田、野茂vs清原のような、パ・リーグの新たな名勝負列伝をつくっていってほしいですね」(前出・村瀬氏)

後半戦での活躍にますます期待が高まるが、球場まで観に行く価値のある選手であることは間違いない!