今年6月、独立リーグ・四国アイランドリーグplusの『高知ファイティングドッグス』で日本球界に復帰をした藤川球児 今年6月、独立リーグ・四国アイランドリーグplusの『高知ファイティングドッグス』で日本球界に復帰をした藤川球児

今年6月に独立リーグ・四国アイランドリーグplusの『高知ファイティングドッグス』で日本球界に復帰をした藤川球児

週プレNEWSでは第一弾第二弾と独占インタビューをお送りしてきたが、今回の最終回ではインタビュアーである野球解説者の橋本清氏を通して、阪神復帰報道などメディアに対して感じた不信感から野球界への思いまでを熱く語ってくれた!

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■スポーツ紙の報道には正直、腹が立ちました

橋本 最初、俺も新聞の報道見て阪神戻るんやなと思ってたけどね。

藤川 なんかもう決まってる話みたいな。獲得方針で本人も了解とかね。全然ちゃうのに、なんでこんなメディアが先行するんやって。仕方ないんでしょうけどマスコミ主導になってしまう。自分でも本当に必要としてもらってという条件が一番にあって、それがタイガースなら他とは話をせずにという思いはありましたよ。

橋本 それで阪神と話はしたんやろ。必要やという熱意が伝わらないというか認識にズレがあったの?

藤川 ズレというか、そもそも日本に戻って、まず家族と過ごすのに地元のアイランドリーグでやりたいなと。兄貴が高知のGMやってた縁もあって、トップの人に連絡して意向は伝えてたんですよ。

ただ、道義もあるんでNPBから話があったらそっちも聞かなきゃいけないなと。交渉するのが阪神なら阪神で、それがイヤやから断って、しょうがなくこっち行ったみたいに思われるのは困るんで。実際、選択肢は自分で取るもんやと思ってましたし。

橋本 阪神との話があって、合わんかったから高知行くというんではないぞと。

藤川 そうです。それで、もし絶対に阪神が戻ってきてくれというならこんな幸せなこともないし。それに応える覚悟もあるけど、それがぼやけて見えなかった。タイガース自体、そこまでじゃなかったと思いますしね。

阪神が怖がった?モノ申すキャラ

橋本 まぁ今の球団内の事情とか思惑もあるやろしな…。球児が戻ったらいろいろモノ申すキャラやし(笑)。

藤川 そういうのも怖いでしょうね(苦笑)。僕は嘘つかないですから。それでいうと、そのマスコミでも阪神決定とかね、アメリカで140キロしか出てないからタイガースしかオファーがないとか、そういう嘘の記事もびっくりしたし、正直、腹立ちましたよ。

情報操作というか格安な条件で取りたいために流してるんちゃうかと。いらないけど、ダメな落ち目の選手を戻してやったみたいな話にされるんやったらナメすぎちゃう?って。悔しいですよね。

橋本 そりゃ、そうやなぁ。

藤川 そんなんで古巣やから入れてもらえませんかって行くくらいなら最初からやってない。僕のキャリアなら辞めなきゃいけないですよ。お客さんに失礼やし、ファンに報いるプレーができると思ってどの球場であっても、またグラウンド立つわけですから。

ほんまお金の問題じゃないし、どこのポジションで使うとかでもなく必要とされる場所で投げたい。そこらへんの気持ちがぐじゃぐじゃして、プラスかマイナスか自分の人生設計の中でぼやけて。野球選手の自分と本当の自分といるのをどっちが行きたい方向なのかといったら、本当の自分がどう見ても勝ってた。それで高知にしたんです。

橋本 それこそ球児の男気(おとこぎ)の部分で選択がそれやったと。

藤川 どっちがプロ野球の発展になりますか?って話でもあると思うんですよ。必ずしも生え抜きがよくて縁も所縁(ゆかり)もあるとこでなきゃっていうのもナンセンスかなと。プロスポーツでは実はいいことあまりないですよね。

僕からしたら選手たちが動くことによって一番いい環境が生まれるんじゃないかなと。権利を行使して地位も上がって、強いチームをつくろうとする球団が欲しい選手を取る。弱くてもいいから愛される球団より、企業理念として勝つためにそれで収益上げて魅力的な楽しいチームつくるのがファンのためやと思うし。

野球に対して純粋じゃなきゃいけない

橋本 まぁだいぶ日本も変わってきてはいるけどね。

藤川 一回それでシャッフルすれば球界ももっとステップアップするかなとは思いますね。僕がタイガースにこだわっても違うなというのがあるし。もちろん独立リーグでやったからって安売りするもんでもないんで。

橋本 まだまだ安いからとりあえず獲っておこうみたいな風潮もあるわな。

藤川 僕の場合、それはないですね。絶対的に欲しいって言われるところがあれば。

橋本 それこそ巨人なんかも今リリーフは困ってるよ。

藤川 それは歴史的にもまた難しいでしょう(苦笑)。

橋本 いや、球児やったらパイオニアになれるよ(笑)。

藤川 やっぱ野球に対して純粋じゃなきゃいけないというか、それでないと今はできないですよ。フロントとか監督、コーチ、メディアとかいろんなことに巻き込まれるのがイヤなんです。本当に自分のために努力して、喜んでくれる人のために結果出しにいく。そういう生き方でいいと。

橋本 メジャーでもいろいろ経験して、純粋に野球にのめり込みたいみたいな?

藤川 のめり込まなきゃというのもあって。契約もあったし、常に結果出さなきゃ結果出さなきゃってやってたんで。向こうだとトレーニング施設から練習プランから、まず今日何するか、明日どうなるかもわからない。いっつも上のほうで首があっぷあっぷなってる感じでしたから。最後これポキンって切れて終わるなと思って。その前に精神的にも安定して野球したいなというのも大きかったですね。

(撮影/五十嵐和博)

●藤川球児(ふじかわ・きゅうじ) 1980年生まれ、高知県出身。高知商から98年、ドラフト1位で阪神に入団。球界を代表するストッパーに。2013年にメジャー移籍、カブス~レンジャーズを経て今年6月に独立リーグの高知で日本球界復帰

 インタビュアー・橋本清氏 インタビュアー・橋本清氏

インタビュアー ●橋本 清(はしもと・きよし) 1969年生まれ、大阪府出身。PL学園時に甲子園優勝。87年、ドラフト1位で巨人に入団。セットアッパーとして活躍するもホークス移籍後にケガで引退。現在、評論ほかで活躍