欧州のシーズン開幕が迫る中、日本人選手にもいくつか動きがあった。
目玉はなんといっても、ドイツのマインツからイングランドのレスター・シティへの移籍が決まった岡崎。約14億円という移籍金は、マインツでの2季連続ふたケタ得点という実績への純粋な評価だろう。レスターは誰もが知るような強豪ではないものの、プレミアリーグのレベルはブンデスリーガよりも数段上。ステップアップといっていい。
ここ3年、サウサンプトンの吉田が奮闘しているけど、日本人選手とプレミアの相性は良くない。最近でも香川、李、宮市らがインパクトを残せないままチームを去っている。
プレミアは選手の体格こそブンデスとほぼ一緒ながら、より激しく、速く、うまいのが特徴。またチェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッドなど欧州チャンピオンズリーグで上位進出できる力を持つ強豪もごろごろいる。そうした厳しいリーグで成功を収めるのは、日本人選手に限らず簡単なことじゃない。
ただ、岡崎に関していえば、やってくれるんじゃないかという期待感がある。ここ数年、日本代表でも所属クラブでもコンスタントに点を取っていて、スランプらしいスランプもない。ケガにも強い。派手な言動もないし、キャラクターも地味だから日本のメディアは大きく取り上げないけど、これは本当に素晴らしいこと。
レスターの選手層はそれほど厚くなく、ある程度の出場機会が与えられるはず。彼の突進力、ゴール前に飛び込む勇気、こぼれ球へ反応する嗅覚、それらの持ち味を発揮できれば十分通用する。泥臭くファイトするプレー姿勢は、イングランドのファンも好感を持つだろう。
武藤はここからが本当の勝負
29歳という年齢を考えれば、次のステップアップを狙える最後のチャンス。PKもFKも蹴らない彼には少々高いハードルになるかもしれないけど、ぜひ今季もふたケタ得点を目指してほしい。「憧れだった」というプレミアの舞台で大暴れして、イングランドのファンに日本人もやるじゃないかと思わせられれば最高だね。
その岡崎が抜けたマインツに加わった武藤にも注目したい。
最初に届いたチェルシーからのオファーは明らかにビジネス目的。いきなり中国のチームにレンタルされるという話もあったようだし、断ったのは正解だ。その点、多くの日本人選手が実績を残しているブンデスの中堅マインツは、初めての海外挑戦としてはうってつけの場所。ここからステップアップを目指せばいい。
どこまで活躍できるかは未知数。何かと岡崎と比較される難しさもある。ただ、それは本人も覚悟の上だろう。日本にいると、いつまでたっても「イケメン」「慶應ボーイ」とサッカーに関係のない肩書がついて回る。
そういう意味でも、今後、日本代表の中心選手になれるかどうかも含めて、彼にとってはここからが本当の勝負。思い切りチャレンジすればいい。マインツのファンの頭から岡崎の名前を忘れさせられれば成功。そのためにも今まで以上に得点にこだわってプレーする必要がある。
なでしこジャパンがW杯準優勝という明るいニュースを届けてくれた。次は男子の番だ。岡崎、武藤の活躍に期待しよう。
(構成/渡辺達也)