大会創設100周年の記念大会にふさわしい盛り上がりを見せた今夏の甲子園。プロ各球団のスカウトたちも連日、未来の“怪物”たちに目を光らせていた。
最大の話題をかっさらったのは、なんといっても早稲田実業(西東京)の清宮幸太郎だが、彼はまだ1年生。スカウトたちの目的は、あくまでも今年のドラフト候補となる3年生だ。
「野手では彼が一番だね」
スカウトたちが太鼓判を押すのは、走・攻・守と三拍子そろった関東一高(東東京)の外野手、オコエ瑠偉(るい)だ。
ナイジェリア人の父を持つオコエは、初戦で49年ぶりの1イニング2三塁打。3回戦では身体能力を生かしたスーパーキャッチで観衆を沸かせ、準々決勝でも9回に値千金の勝ち越し本塁打を放つなど、大会後半には清宮と並ぶ注目株となった。
関東地区を担当するスポーツ紙記者は、こう言って目を丸くする。
「日本ハムのスカウトは、外野スタンドからオコエのプレーを見て、新庄剛志(つよし)、森本稀哲(ひちょり)、陽岱鋼(よう・だいかん)と似た雰囲気を感じたそうです。球界トップクラスのセンターを次々と輩出しているチームのスカウトから見ても、オコエのたたずまいは“画(え)になる”ということ。1位指名もあり得ますよ」
別のあるスカウトも「上位は確定」と断言する。
「あの走塁と守備は、どこも欲しいんじゃないですか。少なくとも“外れ1位”は間違いないし、そこで競合する可能性だって十分に考えられる。そう考えると、単独を狙って1位指名に踏み切る球団も出てくるかもしれない」
大会を取材したスポーツライターは、オコエの人柄にほれ込んだ様子だ。
「取材対応も抜群で、好きな食べ物を聞かれても、肉などの定番ではなく、満面の笑みで『イチゴです!』と答えてくれたり、愛嬌(あいきょう)がありますよね。グラブの話題になった時は『見せましょうか?』と、短い取材時間でもイヤな顔ひとつ見せずバッグから取り出してくれた。そういう誠実さも好感が持てます」
(取材・文/田口元義)