『北斗の拳』など日本のアニメや特撮が大好きな“世界最強のオタク”でもあるジョシュ・バーネット 『北斗の拳』など日本のアニメや特撮が大好きな“世界最強のオタク”でもあるジョシュ・バーネット

世界最高峰の総合格闘技UFCが今年も日本にやってくる! 

9月27日(日)、さいたまスーパーアリーナ大会のメインイベントに登場するのは、かつてPRIDEなど日本のリングで活躍した“蒼い瞳のケンシロウ”ジョシュ・バーネットだ。

週プレNEWSが、ロサンゼルズ郊外で練習するジョシュに国際電話インタビューを敢行!

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―ジョシュ選手、お元気ですか?

ジョシュ うん、元気だよ。今日も練習してきたところさ。

―『UFC JAPAN』での対戦相手ロイ・ネルソン対策として、何か特別な練習をしてますか?

ジョシュ もしやってたとしても、言えないね(笑)。

―企業秘密ですね(笑)。ロイをどう評価していますか?

ジョシュ ロイはそれほどいろんな技術を持っている選手じゃない。だが、自分の得意なことをキッチリとやる。オーバーハンドの右パンチは強烈だし、組み技も黒帯レベルだ。

―ヘンゾ・グレイシーから柔術黒帯を授かってますしね。

ジョシュ ロイは特にここが弱いというところもない。だが、どの分野でも超すごいわけじゃない。ただし非常にタフで、打たれるのを気にせずに右フックを叩き込むし、自分よりレスリングや組み技がうまい選手を相手にしても、うまくテイクダウンしたりする。そして相手の腕を押さえてパンチを落とすよね。

―どんな試合になりそう?

ジョシュ 僕の方がより素早く正確な攻撃ができるし、レスリング、組み技、サブミッション(関節技)とも間違いなく上だから、テイクダウンして関節技で一本勝ちするよ。遅くとも2ラウンド以内にね。

―頼もしい一本勝ち宣言が出ましたね! KO勝ちよりも一本勝ちしたい?

ジョシュ 試合の流れ次第だけどね。打撃で痛めつければ、サブミッションも決まりやすくなるから。キック、サブミッション、スープレックスをどんどん狙っていくよ。そしてロイを仕掛けに誘い込み、背中をマットに付け、サブミッションを決めるんだ。

「アメリカで新日本プロレスの番組の解説者をしてるんだ」

 ジョシュの右は対戦相手のロイ・ネルソン。山本“KID”徳郁、堀口恭司ら日本のトップファイターも多数出場する ジョシュの右は対戦相手のロイ・ネルソン。山本“KID”徳郁、堀口恭司ら日本のトップファイターも多数出場する

―かつてバルセロナ五輪・柔道金メダリストの吉田秀彦と闘った時は、バックドロップで投げて会場を大いに沸かせましたよね。今回もプロレス技を狙っていく? それとも徹底して勝ちにこだわって、素早く仕留める?

ジョシュ どっちもありうるね。もし僕の強烈なバックドロップがキッチリ決まれば相手を失神させることができるから、そこで試合終了さ。失神させられなくても強烈なダメージを与えられるよ。こういう大技は見た目もエキサイティングだけど、常に有効な技でもあるんだ。スープレックスで投げてダメージを与え、強烈なパンチを叩き込めば、それでKOできるしね。だからチャンスがあれば使っていくよ。

―しかし、ロイはUFCヘビー級の上限120㎏。しかも計量は前日なので、試合当日には130㎏以上になっていると思うんですが、スープレックスで投げるには重すぎませんか?

ジョシュ まったくノー・プロブレムさ。ロイなんか楽に投げられるよ。レスリングで彼より重い選手を何度も投げてるしね。

―ところで、日本では最近プロレス人気が復活し、特に新日本プロレスが好調です。

ジョシュ 僕はアメリカのテレビ局AXS(アクセス)でやってる新日本プロレスの番組で解説者をしてるんだ。かつて僕が教えたり、一緒に練習した日本人プロレスラーが活躍する試合を解説するのはとても嬉しいよ。いまや新日本はストロングスタイル・レスリングをアメリカや世界各国に広めるリーダー的役割を担っているからね。アメリカにも新日本のファンはどんどん増えてるんだ。

今回のUFC日本大会にはファンだけじゃなくて、多くの日本人プロレスラーも来て僕を応援してほしいね。僕はプロレスラーのレベルの高さを総合格闘技の試合で証明してみせるから。

―新日本のレスラーで仲がいい選手は?

ジョシュ よく(獣神サンダー・)ライガーや永田(裕志)とは話をしてたね。中邑(真輔)や飯塚(高史)、中西(学)と練習したこともあるよ。飯塚とは彼が鈴木みのると試合する時、特訓に付き合ったし、中西がK-1で闘った時は僕が指導したよ。

「ネルソン…お前はもう死んでいる!!」

―あなたは日本のアニメの大ファンでもありますね。

ジョシュ もちろんさ!

―日本に興味を持ったのは、アニメが先? それとも格闘技が先?

ジョシュ アニメとか怪獣映画が先だと思う。子供の頃に『宇宙戦艦ヤマト』や『ゴジラ』、『ガメラ』を見た。ガメラは興味深いね。最初はゴジラの第1作とすごく似てたんだけど、途中からバカな映画になっちゃった、『ガメラ対ギロン』とか(笑)。面白かったけどね。怪獣映画以外には『ジャイアントロボ』も好きだったね、ヨコヤマ(横山光輝)の。

―最初の実写版を見たんですか?

ジョシュ 最初は実写版のTVシリーズを見たよ。それから1990年代にアニメシリーズが作られたけど、それが一番好きだね。素晴らしかったよ!

―日本の声優で一番好きなのは?

ジョシュ やっぱり『北斗の拳』のケンシロウをやった神谷明が大好きだね。

―ジョシュ選手のニックネームは“蒼い瞳のケンシロウ”ですからね! ツイッターにもオリジナルの『UFC JAPAN』のポスターを挙げてましたが、ケンシロウのコスチュームを着て、胸には北斗七星の形の傷跡があり「ネルソン…お前はもう死んでいる!!」と言いながら首切りポーズをしているイラストで。

ジョシュ そうそう! 日系四世の友達が描いてくれたんだ。「ネルソン…お前はもう死んでいる!!」のセリフを読む時は、神谷明の声を想像してくれ!

―わかりました(笑)。あのポスターでは、あなたの他に4人の日本人選手のシルエットが描かれてます。

ジョシュ 『ROAD TO UFC JAPAN』で、僕がコーチを務めている選手、西浦“ウィッキー”聡生(あきよ)、DJ.taiki、石原夜叉坊(やしゃぼう)、そして大尊(たいそん)伸光の4人さ。

*『ROAD TO UFC JAPAN』=8人の日本人格闘家がUFC出場を目指す登竜門番組。ジョシュ・バーネットチームとロイ・ネルソンチームに別れ、勝ち残ったふたりが9月27日の日本大会で決勝戦を行なう。テレビ東京で月曜深夜1時から放送中

―彼ら以外にも、あなたは以前から日本人選手の指導をしていますね。女子格闘界のレジェンドだった藤井惠さん(一昨年10月に引退)とか。

ジョシュ メグミの全盛期にUFCで女子ストロー級ができていれば、彼女は間違いなくチャンピオンになってたね。今のストロー級王者、ヨアンナ・イェンジェイチックにも、2Rくらいで勝てるよ。

「日本人格闘家に欠けているのは、ヘッドコーチの存在だ」

 2002年には史上最年少(24歳)でUFC世界ヘビー級王座を獲得した 2002年には史上最年少(24歳)でUFC世界ヘビー級王座を獲得した

―今の日本人選手がUFCで王座を獲るためには、何が必要でしょう?

ジョシュ パワーやスタミナ面をより強化するのも大事だと思うが…一番大事なのはヘッドコーチをつけることだね。選手のトレーニングや技術、食事など全体を監督できる人が必要だ。練習の計画を立て、その構造をしっかり作ってくれる人がね。

過去の日本の格闘家たちはプロレスのシステムから出てきたってことが忘れられてると思う。新日本、リングス、パンクラスとかね。そうした道場にはヘッドコーチがいた。前田日明、ビル・ロビンソン、カール・ゴッチ、そしてアントニオ猪木…ヘッドコーチが選手の練習全体を見て、チーム全体が成長できるシステムがあったんだよ。それが今の日本ではなくなりつつあると思う。

―たしかにアメリカの選手たちに比べ、日本の格闘家たちの多くに欠けているのはヘッドコーチの存在かも…。

ジョシュ 今回の『ROAD TO UFC JAPAN』で大尊を指導した時に思ったのは、なんで彼は155ポンド(70.3㎏、ライト級)で試合してきたんだ?ってことさ。UFCなら145ポンド(65.8㎏、フェザー級)が適正階級の選手だ。それより上の階級で試合すべきじゃない。世界レベルでウェルター級やライト級で闘うほど体が大きくない。そういった適正階級についても、ヘッドコーチはアドバイスするんだ。

―他に日本人選手の優れた点と、弱点はどこだと思います?

ジョシュ 優れた点は、すごく一生懸命練習することだ。方向性を与えて導いてあげれば、日本人はすごく頑張る。ただ、間違った方向に導くと、そちらに向かって100%努力しちゃうから危険なんだけど(苦笑)。だからこそ、練習をちゃんと統轄できる人が重要なんだ。

日本人は全力で物事に打ち込むことに長(た)けている。他の国の人だと、ちょっとやったらすぐ「あ~疲れた。こんなハードに頑張る必要なんかないよ」ってなるけど、日本人は「まだまだ自分は努力が足りない」っていう謙虚な気持ちを失わない。そこも素晴らしい。常に自分を改善しようと、たゆまぬ努力をする。

悪い点は、うまく結果が出ていない時に、どこが悪いのか、うまく分析できないことがしばしばある点だ。何が悪いのか、賢く判断しようとせず、ただひたすらガムシャラに努力を続ける。

それも大事だが、どの部分を強化すべきかとか賢く判断することこそ、より大切だ。知的な選択をして必要な修正を加えること。歯を食いしばって耐えることとか人より早くやるというのが日本的だけど、それだけだと悪い部分を改善するのが難しいんだよ。

■この続きは明日配信予定。ミルコ、ノゲイラ…ライバルたちへの思いを激白!

■ジョシュ・バーネット 1977年生まれ、米国ワシントン州シアトル出身。レスリング、柔道、ムエタイを学び18歳でプロデビュー。2002年、史上最年少でUFC世界ヘビー級王座を奪取。03年には無差別級キング・オブ・パンクラシストとなり、04年からPRIDEに参戦し『PRIDE無差別級GP2006』で準優勝。13年、UFCに復帰しヘビー級トップ戦線で活躍中。

■『UFC JAPAN 2015』 9月27日(日)/さいたまスーパーアリーナ/午前8:00開場、午前8:30オープニングファイト開始予定 ●WOWOWで午前8:30から全試合生中継予定(対戦カードなど詳細はHPにて)

(取材・文/稲垣 收 撮影/長尾 迪)