甲子園で躍動し、全国にその名を知られた選手たちの陰には、地方予選で惜しくも敗退したドラフト候補もいる。
優勝投手となった東海大相模の小笠原慎之介や関東一高のオコエ瑠偉(るい)を差し置き、「1位最有力」「特A評価」と評されるのが、県岐阜商の高橋純平だ。
春のセンバツに出場した最速152キロ右腕だが、夏の予選が始まる頃に左太ももを負傷。満足に投げられず準決勝で涙をのんだ。それでも、地元球団の中日や阪神など、依然として1位候補に挙げる球団は多い。スポーツ紙デスクはこう語る。
「実は『日本ハム以外なら大学進学』という話もあるんです。日本ハムの東海地区担当スカウト・熊崎誠也氏が同校OBで、関係者とのパイプが強いといわれています。ドラフトでは競合確実なので、日本ハムがクジを引き逃したら、高橋がどの道を選択するのか見ものです」
大分商の“九州No.1投手”、森下暢仁(まさと)の評価も高い。甲子園出場経験はないもののストレートの最速は148キロを誇る。九州地区担当のスポーツ紙記者は「上位もある」と言う。
「外れ1位なら可能性は高いですね。『競合を避けるためにソフトバンクが一本釣りするんじゃないか?』という話も出ているほどです」
“隠し玉”は沖縄・普天間にも!
彼らはいわば本命だが、ドラフト会議では、毎年のように“隠し玉”が出現する。今年もどうやらそんな投手がいるようだ。前出の九州担当記者はこう語る。
「普天間(ふてんま・沖縄)の與那原大剛(よなはら・ひろたか)は面白い存在ですよ。身長190㎝、体重88㎏と大柄で最速は148キロ。沖縄大会の初戦から11球団のスカウトが視察に来るなど注目度はかなり高い。普天間という場所も何かと話題性がありますし」
同じ長身投手では、八戸工大第一(青森)の内沢航大(こうた)も隠し玉候補。最速は145キロながら身長195㎝、体重90㎏と恵まれた体格。セ・リーグ某球団スカウトはこう言って目を光らせる。
「リリースポイントが安定しているからコントロールがいい。体の大きさの割には器用なピッチャーだと思う」
今年の「予選敗退組」、ヘタすると甲子園出場組より逸材ぞろいかもしれない。
(取材・文/田口元義)