10代アスリートの活躍が目立った夏だったが、日本のみならず世界を驚かせたのが、陸上短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(16歳・城西大城西)だ。

ガーナ人の父と、短距離でインターハイ出場経験のある日本人の母を持つサニブラウンは今年7月の世界ユース選手権の200mでウサイン・ボルト(ジャマイカ)の大会記録を更新する20秒34の大会新記録で優勝。さらに100mも制して2冠を達成、今年8月の世界陸上に史上最年少となる16歳5ヵ月で出場を果たした。

その世界陸上では、200m1次予選でジャスティン・ガトリン(アメリカ)に次ぐ2位で準決勝進出を決め、ガトリンに「すごい勢いで来たから抜かれるんじゃないかと焦ったよ」と言わしめた。スポーツライターの折山淑美(としみ)氏がこう語る。

「大会前からしきりに“ボルト超え高校生”といわれていましたが、彼が超えたのはボルトの世界ユースでの記録であって、ユース時代のベスト記録(20秒13)ではない。

(日本人初の100m9秒台を期待されていた)桐生祥秀(よしひで)が6月に故障して大会不出場が決まり、目玉が欲しいメディア側の意向で、サニブラウンが必要以上に持ち上げられていたのです。本人は大きな重圧を感じたでしょう。そんな中での準決勝進出は立派です」

折山氏は、サニブラウンの将来性をこう語る。

体がまだできていないので、200mをベストなフォームで走り切る体力がまだついていません。それなのに好タイムを出せているのは、ヒザ下が長く、スピードに乗ってからのストライドが大きいから。天性の素質と言っていいでしょう。

今後、ケガさえなければ、いずれ19秒台(今回の世界陸上200mでは4位までが19秒台)を出すのは当然。もっと大きなスケールのランナーになる可能性も秘めています。

今後も200mがメインになるでしょうが、体力がつけば400mも走れるタイプですし、スタートの練習次第では100mに対応可能なポテンシャルも持っています。また、桐生も『いずれ200mもやってみたい』と言っているので、ふたりで競い合い、日本短距離界を引っ張ってくれると思います」

■『週刊プレイボーイ』38号「このまま頑張れ!!スーパー中高生アスリート」より(本誌では、さらに世界に通用する中高生の有望アスリートを一挙紹介!)

(取材・文/水野光博)