ラグビーW杯初戦で優勝候補の南アフリカに奇跡の勝利! 第2戦のスコットランド戦は敗れたものの、我らがジャパンはなぜ“史上最大の番狂わせ”を起こせたのか? 

その裏には2012年からチームを率いる名将エディー・ジョーンズが課してきた“世界一厳しい練習”があったーー。選手が「理不尽とも思える仕打ちを受ける」とコボすほど過酷な、その強化法とは?

■一日中、心身ともに気が休まらない合宿

ラグビーW杯初戦で南アフリカを相手に大金星を挙げ、続くスコットランド戦では最終的に完敗を喫したものの後半途中までは接戦。ジャパンの激闘は日本人のみならず、世界中のスポーツファンの魂を大きく揺さぶった。

だが世紀の健闘は、決して幸運や相手チームの油断の助けを借りて達成されたのではない。南ア戦後、FフルバツクBの五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)はこう断言した。

「必然です。ラグビーに奇跡なんてない」

必然とは何を意味するのか? それは選手が「世界でこれほどやってきた国は、日本だけ」と口をそろえる3年間の猛練習と、その蓄積によってのみ可能となった周到な準備だ。『ラグビーマガジン』の田村一博編集長が語る。

「エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は過去のW杯で、HCとして母国オーストラリアを準優勝させ、テクニカルアドバイザーを務めた南アを優勝に導きました。つまり、世界で勝つには何が必要かを知る人物。さらにサントリーでの監督、GM経験もあり、日本選手のこともよく理解している。そんな彼は2012年の就任早々、まずはジャパンの体力ベースを上げることから始めました」

従来のジャパンは、体力勝負では世界に勝てないと最初から決めつけ、フィジカルトレーニングにさほど重きを置いていなかった。

しかしジョーンズHCは、世界標準のパワーがなければ同じ土俵にさえ立てない、その上で小柄ながらも俊敏なジャパンが強豪を打ち負かすには、相手に走り勝ってパスをつなぎ続けるための持久力が必要と考え、徹底的にフィジカルに負荷をかけたトレーニングを課したのだ。

「何度も長期合宿を張り、毎日早朝からの3部練習を敢行。しかもメニューそれぞれの強度が高い。普通なら厚いパッド入りのコンタクトスーツを着けて行なう練習を、ほぼ生身でやらせて互いにフルスピードでぶつかり合う状況にしたり、攻撃練習では守備側の人数をかなり増やし、ハイプレッシャー下でプレーさせたりもした」(田村氏)

しかも各メニューの間隔が短く、息つく暇もない。常に素早く判断し、速いプレーを連続して行なうことを選手に意識づけさせるためだ。

「さらにその日の全体練習終了後、ランダムに数人の選手が招集されて追加トレーニングを命じられたりする。つまり、一日中、心身ともに気が休まらないのです。

エディー体制となってから、ある代表選手が合宿中に『覚悟を持って毎日のトレーニングをやり抜くんだという気持ちがないと、このチームではやっていけない』と評していたのが印象的ですね」(田村氏)

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