PRIDE消滅後は格闘技界から離れ、FC琉球の経営などに携わっていた榊原信行氏が8年ぶりに「復帰」

2000年代に格闘技ブームを巻き起こしたPRIDEーー

その消滅から8年たった今、日本に「世界最高峰」の闘いのステージがよみがえる。PRIDEの主催者だった榊原信行氏が格闘技界に「復帰」したのだ。週プレは、榊原氏の世界最速独占インタビューを敢行!

12月29、31の両日、“聖地”さいたまスーパーアリーナで開催される新イベントの名は「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND‐PRIX 2015」

「RIZIN(ライズィン)」は「Rising Sun」と「雷神」をかけ、「Z」には「無限」の意味を込めたという。そして、フジテレビによる地上波中継も発表。格闘技ファンが夢見た「PRIDEの復活」がいよいよ現実のものとなる。

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―ついに「RIZIN」開催が発表されました。まずはエメリヤーエンコ・ヒョードルの復帰が大きな目玉です。

榊原 ヒョードルに関しては、おそらくUFCのほうがビッグマネーを用意できたでしょう。UFCに上がっていない最後の大物でPPV収益も期待できるし。しかし、彼は我々と契約した。ヒョードルとは今年1月頃から話を始めましたが、最初は復帰する意思はなかった。

だけど、彼は日本で今の地位を築いたことに感謝しているし、日本のファンの温かさもわかっている。さらに、ケージでは3敗しているけどリングではアクシデントによる負け以外は無敗だから、絶対的な自信を持っているんですね。

そういった思いがあって、日本でまた大きなイベントが行なわれるなら復帰しようと決意してくれました。ただ、笑ってしまったのは、本人の意思だけで復帰は決められなかったということ。

―どういうことですか?

榊原 プーチン大統領に許可をもらわないと復帰できないって。ヒョードルは大統領の命を受けてロシアのスポーツ省で選手の育成を担当していて、それを辞めて復帰するわけだから。

彼はこの3年間、体をオーバーホールしているから悪いところが治っている。MMA(総合格闘技)は立ち技、寝技、様々な技術が必要な分、引き出しも増えていくから年を重ねても強くなることができる。ヒョードルはまだまだ進化していきますよ。

格闘技の新たなページが開幕する

「RIZIN」出場が決定した選手たち。左から、青木真也、RENA、エメリヤーエンコ・ヒョードル、桜庭和志、ギャビ・ガルシア

―そして、桜庭和志選手のMMA復帰戦も。キャリア後半では痛々しい敗戦も多く、見たいような見たくないようなという声もありますが、相手が青木真也選手というのは驚きました。

榊原 その前提として、RIZINが掲げる「三本の矢」というキーワードの話を。ひとつ目の矢は「完結」。PRIDEを象徴するようなファイターたちにとっては、引退の場所がなくなってしまったという状況がある。

桜庭が新日本プロレスで活躍しているのは素晴らしいことだけど、そのリングで引退することをファンは望むだろうか? その舞台は僕たちがつくってあげたいと思うんです。そして、桜庭のような功績を持った選手が次の世代へバトンタッチをすること…これも我々の課題なんです。

―それゆえの桜庭vs青木と。しかし、勝利に徹する青木選手が1分で関節を極めて終わってしまう可能性は?

榊原 コアなファンの中には、桜庭の復帰が見られればそれでいい、イージーな相手でもいいから桜庭が勝つ場面を見たいという人もいるかもしれない。

だけど格闘技は、勝者は何かを手に入れ、敗者は失うという非情なもの。だから常に摩擦を起こさないといけない。この一戦で、格闘技界の至宝みたいなものが表現できるんじゃないかと思います。

―そう考えるとパーフェクトなマッチメークですね。しかし、なぜこの試合は大晦日ではなく29日に?

榊原 まずは29日の桜庭vs青木でストライクを取りにいく。そして、大晦日のトリをヒョードルが務めることで、格闘技の新たなページが開幕するんです。

「完結」の話でいえば、ヴァンダレイ・シウバは私に「自分には死に場所がない」と言っていた。「グローブを置く場所は、自分と共に大きくなっていったイベントでないとおかしい。さいたまスーパーアリーナの大熱狂の中で引退したい」と。

―ファンもそれを望んでいるでしょうね。

■この続きは、『週刊プレイボーイ』43号でお読みいただけます!

■榊原信行(さかきばら・のぶゆき)1987年に愛知大学を卒業し、東海テレビ事業へ入社、各種イベント・コンサートのプロデュースを行なった。2003年、ドリームステージエンターテインメント代表取締役に就任し、PRIDE黄金時代を牽引。07年にはFC琉球の経営に参画し、沖縄初のJリーグクラブ創設の礎を築いた

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(取材・文/“Show”大谷泰顕 編集部 撮影/山本尚明 乾晋也)