ロシア・スポーツ省で働いていたヒョードルは、現役復帰にあたりプーチン大統領の許可が必要だったという

年末、“ロシアン・ラストエンペラー”エメリヤーエンコ・ヒョードルが“PRIDEの聖地”に帰還!

12月29、31日の両日、さいたまスーパーアリーナで開催される「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2015」(以下、RIZIN)で、3年半ぶりの復帰戦が決定したのだ(ヒョードルの試合は31日)。

復帰の本当の理由は日本のジェットコースターに乗るため?という噂から、気になるプーチン大統領との関係まで、あれこれ質問してみた!

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―日本での最後の試合は2011年大晦日の石井慧(さとし)戦でしたが、来日は久々ですか?

ヒョードル いえ、リングを降りた後も日本には頻繁(ひんぱん)に来ていたんです。特に昨年は「日露武道交流年」でしたので、私はロシア側代表として日本武道館のイベントに参加しました。

RIZINでの復帰を決めたきっかけは、今年の春、榊原さん(RIZIN実行委員長)が私を訪ねてきたことです。彼は「日本の格闘技イベントを再興したい。もう一度、世界一のイベントをつくりたいから協力してほしい」と。少し考えさせてもらった上で、彼の提案を受け入れることにしました。その理由は、私はロシア格闘技連盟の代表でもありますし、スポーツを通してロシアと日本を近づけたいという思いからです。

―しかし、世界のMMA(総合格闘技)を席巻するUFCに参戦したほうが多額のお金を得られたのでは?

ヒョードル 確かにそうだったかもしれませんが、人生はお金がすべてではありません。他人のために何ができるか、それが大事です。RIZINの誕生は、ロシアや日本だけでなく世界中の若いファイターに新しい可能性を与えられると思います。

―今回、復帰するにあたり、プーチン大統領の許可が必要だったとか?

ヒョードル 私はロシアスポーツ省で特別補佐官として働いていたので、そこを辞めるには大統領の許しを得ないといけなかった。幸い、「ぜひ頑張ってください」と励ましの言葉をいただきました。

―プーチン大統領って、どんな人なんですか?

ヒョードル 柔道とサンボでスポーツマスターの称号をお持ちですし、水泳やスキーも達者…真のスポーツマンです。国民へのスポーツ普及にも力を入れており、それは健康増進を促進し医療費を抑え、ロシア全体の繁栄につながると信じています。

―格闘技ファンの間では、プーチン大統領は“世界最強の政治家”と称されています。一緒に練習をしたことは?

ヒョードル それはありません(笑)。ただ、非常に強いということは事実だと思います。

―先ほどおっしゃった日露武道交流イベントはモスクワでも開かれて、そこでは大統領、レスリング五輪3連覇のアレクサンダー・カレリンとの3ショットも。3人そろうとどんな話を?

ヒョードル スポーツのこと、家族のこと…なんでも話しますよ。

―スケベな話とかも?

ヒョードル …私もカレリンさんも家族がいますし、もうそういうことを話す年でもありません(微笑)。

試合後は富士急ハイランドで“皇帝”絶叫?

「シベリアの凍土をも砕く」と言われた恐怖のパウンドも復活するか!?

―復帰の本当の理由は、日本のジェットコースターが好きだからという噂もあるんですが…。

ヒョードル もちろん、そんなことはないですよ(笑)。でも、ジェットコースターは大好きです。特に富士急ハイランドは最高。娘たちも大好きで、今回も「パパ、連れていってよ。一緒に日本に行きたい!」と懇願されたんですが、学校を休ませるわけにはいかないので。次は連れてこようと思います。

―ヒョードルさんもジェットコースターに乗ると絶叫するんですか?

ヒョードル 私は大きな声を出さないので、黙って耐えています。

―その姿を映像で見たいです! 大晦日の試合後は富士急ハイランドに?

ヒョードル 行ければいいですね。でも、できれば長い行列に並ばずに入れたら嬉しいんですけど。

―勝利者賞として優先券がもらえたらいいですね。

ヒョードル そうなれば嬉しいです(微笑)。

―ヒョードルさんはひとりで山手線に乗っているという説もあります。

ヒョードル まったく不自由なく乗れますよ。それは、初来日から15年たっているからというわけではなく、最初から簡単に乗れました。実は昨日も電車に乗ったんですが、どこに行ったかは秘密です。

―格闘技の話に戻すと、PRIDEのリングでは無敗でしたが、ケージ(金網)の試合では3敗しています。敗因はなんだったのでしょう?

ヒョードル 神様のご意思だと思います。練習を手抜きしていたわけでもないし、万事整えていたつもりだった。それでも負けてしまったのは、この試練を乗り越えてさらに上を目指せということだったのでしょう。

―年末は誰と対戦したい?

ヒョードル 誰とでも戦います。優秀なファイターは世界中にたくさんいますから、榊原さんにお任せしています。今回、RIZINで復帰するという自分の判断には満足していますし、家族も喜んでいます。私は日本が大好きですし、PRIDEをつくった人たちと再び一緒に仕事ができることに感謝しています。

■エメリヤーエンコ・ヒョードル1976年生まれ、ロシア出身。リングスを経て、2002年にPRIDEに初参戦。翌年、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラを破りヘビー級王者に。12年の引退後はロシアスポーツ省特別補佐官、ロシア格闘技連盟代表を務めた

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(取材・文/“Show”大谷泰顕 撮影/長尾 迪)