格下相手のアウェー2連戦。ハリルホジッチ監督には選手間の競争心を煽り、チーム力の底上げにつながる采配に期待したい

日本代表がW杯アジア2次予選のシンガポール戦(12日)、カンボジア戦(17日)のアウェー2連戦に臨む。

ともに埼玉スタジアムでの前回対戦では苦戦を強いられた相手。シンガポールにはシュートを23本も打ちながらゴールを奪えずに0‐0の引き分け。カンボジアには3-0で勝ったものの、終始チグハグでストレスのたまる試合内容だった。

ただ、今回は心配無用だ。もう予選序盤の独特のプレッシャーはない。2試合とも日本がすんなりと勝つだろう。現在、グループ首位の日本と両チームの実力差はそれだけ大きい。前回対戦時よりも内容、結果ともに悪くなることは考えにくい。

アジアの強豪である日本との対戦ということで、おそらくスタジアムは満員。完全アウェーの雰囲気に包まれるはず。とはいえ、すでに両チームとも最終予選進出の可能性は少なく、本気で日本に勝てるとは思ってないんじゃないかな。できるだけ失点を少なくして、あわよくば1点取れたら程度のモチベーションだろう。日本にとっては2試合で勝ち点6を奪うのは当然のノルマだし、いわば消化試合みたいなものだ。

もちろん、そんな試合でも重要な意味はある。特に、僕が注目しているのはハリルホジッチ監督の選手起用だ。今までの彼は精神的にゆとりがなかったのか、同じメンバーばかり起用してきた。所属クラブでのプレー内容がパッとしなくても、“不動のスタメン”にほとんど手を加えてこなかった。

イラン戦での南野のような起用はやめてほしい

そんな彼の気持ちはわからないでもない。でも、そろそろ十分だろう。この先に控える最終予選、さらにはW杯本大会をにらめば選手層は薄いし、チーム力を底上げするには選手同士の競争心を煽(あお)ることが必要だ。

何しろ誰が出ても負ける心配の少ない相手なのだから、所属クラブで結果を出していない選手、実力のわかっているベテラン選手、調子がいまいちの選手を無理してスタメンで使う理由は何もない。むしろ今まで十分なチャンスを与えてこなかった選手たちに目を向けるべきだ。先発と途中交代では条件が違うし、選手が得られる自信や経験もまったく違うのだから。

攻撃陣ならACミランで試合に出たり出なかったりの本田に代わってハノーファーで好調の清武、レスターでベンチを温めることの多い岡崎に代わって先日ハットトリックを達成した武藤(マインツ)をスタメンで起用してみてはどうか。やっと巡ってきたチャンスに、彼らはがむしゃらにプレーするはずだよ。

ボランチも主将の長谷部(フランクフルト)の力はもう十分にわかっているはず。口では「新しい選手にもチャンスを与える」と言いつつ、10月の親善試合のイラン戦で南野(ザルツブルク)を後半43分に起用したような采配をするのはもうやめてほしい。

ロシアW杯出場への道のりはまだまだ長い。今からメンバーを固定するのではなく、多くの選手にチャンスを与え、ひとつでも新たな発見をすること。それがハリルホジッチ監督に課せられた「2連勝」以外のもうひとつのノルマだ。

(構成/渡辺達也)