冬の移籍市場が近づく欧州各国リーグと、シーズン終盤を迎えたJリーグ、ともに移籍の話題がにぎやかになってきた。
そんな中、今年6月以降、“浪人”状態だったGK川島の所属先が決まった。新天地はスコットランドのダンディー・ユナイテッド。決してレベルが高いとはいえないスコットランドで現在最下位。はっきり言って、ステップダウンだ。なぜJリーグに戻ってこないのかという疑問はある。
ただ、一方では彼の挑戦に敬意を表したい気持ちもある。GKは海外でプレーすることが難しい特殊なポジションだからだ。かつて川口(能活、岐阜)もイングランドとデンマークで苦労したよね。試合に出られるのはチームでひとりだけ。語学力も求められる。よほどの大物でなければ、貴重な外国人枠をGKに使おうという発想にはなりにくい。
実際、Jリーグにも多くの外国人選手がいるけど、GKは少ない。そういう意味で、川島がこれまで欧州でプレーし続けてきたことは評価すべきだし、今回もよくチームを見つけたと思う。もちろん、再び日本代表に選ばれるかどうかは今後次第。レギュラーの座を確保し、結果を残せるのなら資格は当然ある。
国内組では、今後の日本代表を担(にな)うべき世代の宇佐美(G大阪)と遠藤(湘南)の移籍が取り沙汰されている。
宇佐美はドイツに再チャレンジするかもしれないそうだ。Jリーグ復帰から約2年半、G大阪のエースとして得点を重ね、一昨季のJ2優勝、昨季の国内三冠とチームにタイトルをもたらしてきた。実績としては十分だ。
とはいえ、2度目の欧州挑戦でどれだけやれるかは未知数。本人も前回の経験からわかっているだろうけど、“助っ人”である以上、求められるのは目に見える結果、つまりゴールだ。その点、最近の宇佐美は以前よりも自分で仕掛ける場面が少なく、迫力が減った印象があるので少し心配。
まだ23歳とはいえ、事実上のラストチャンス。二度とG大阪には戻らないという覚悟で頑張って、再びバイエルン・ミュンヘンからオファーをもらえるくらいの活躍を期待したい。
経費削減ばかり考え、投資を惜しむ各チーム
U-22代表の主将も務める遠藤には浦和、鹿島、名古屋など国内の複数チームがオファーを出しているそうだ。
遠藤は運動量があって、ボランチもセンターバックもできる守備の万能選手。レベルの高いチームで経験を積めば、まだまだ伸びる可能性がある。彼にはいいチャンスじゃないかな。個人的には優勝争いもでき、アジアチャンピオンズリーグにも出場できる浦和に入ったら面白い気がするね。
最近のJリーグでは、若手がちょっと活躍するとすぐ欧州に行きたがり、クラブもそれを簡単に認め、安売りしてしまうケースが多い。しかも、中にはとてもステップアップとはいえないレベルの新天地もある。
でも、それは結局、選手にとってJリーグの魅力がそれだけ乏しくなっているということ。選手はプロ。条件のよりよいチーム、リーグに行きたくなるのが当然だ。なのに、Jリーグの各クラブは経費削減ばかり考え、投資を惜しんでいるわけだから。
そうした状況にあって、遠藤のような若手の有望株の争奪戦はファンの関心も高まるし、歓迎すべきこと。これがプロチーム、プロリーグの本来あるべき姿。国内外問わず、日本代表クラスの選手に声をかけるチームがもっと増えてほしいね。
(構成/渡辺達也)