パナソニックvsサントリーという黄金カードで開幕したラグビー「トップリーグ」。
11月13日に行なわれたこの試合、前売り段階でチケット5千枚が完売し、当日券が出なかった経緯から大盛況が予想されていた。ところが、約2万人収容の秩父宮ラグビー場に訪れた観客は1万792人。両ゴール裏やバックスタンド両端がガラガラ状態での一戦となってしまったのだ。
主催の日本ラグビー協会は、開幕戦終了後に急遽(きゅうきょ)、会見を開いて釈明。両チームへ事前に計9千枚のチケットを割り当てていたが、その半数程度しか実際には来場せず、さらに自由席の回数券や年間パスポートの保有者のために確保していた3千席も想定したほど埋まらなかったことが原因だったという。
しかし、この説明は事実ではなかった。会見の3日後、サントリーは公式サイトで「われわれは開幕戦に関し、集客計画を2500人とし、社内販売やファンクラブ販売向けに1800枚の日付指定券をトップリーグ(日本協会)から購入したのみで、しかも当日はそのほぼすべてが来場者の手に渡った」と反論したのだ。
チームが必要数以上のチケットを購入し、使わずに抱え込んでいた事実などなかったし、サントリーに匹敵する人気を誇るパナソニックも同程度のチケットを購入していたとするならば、両チームに渡っていたチケットは合計約4千枚。その数字さえも、協会の言い分とはまるで異なっているのだ。
なぜ、このような食い違いが生まれたのか、『ラグビーマガジン』の田村一博編集長はこう語る。
「協会自身も事態を把握できていないんですよ(苦笑)。マンパワーが絶対的に不足していて、試合ごとにどんなチケットがどう流れているのかを正確に理解している人がいないのです」
不入りの真相と日本ラグビー協会の対策とは?
では、不入りの真相は?
「年間自由席パスポートや、シーズン中のどの試合も観戦可能な自由席回数券などの保有者の来場を、協会が3千枚分どころか相当に多く見込み、席を確保していたようです。何せこのラグビー人気ですからね。でも、そうした券の保有者にはラグビー自体というより特定チームのファンも多く、彼らは開幕戦だろうと人気カードだろうと、応援するチームが出場しないとなかなか足を運びません。協会はそこが読めていなかった。しかも、当日券が発売されなかったため大量の空席が出現したのです」(田村氏)
そんな失態を二度と繰り返さぬため、協会はどうすればいいのだろう。
「W杯後のラグビーブームは協会が予測しようもなかったことなので、今回の件は仕方がない部分もあります。しかし、次に満員の可能性がある試合では開幕戦の教訓を生かして適切に来場者数を読み、本当に見たい人たちにチケットが渡るようにしないと新規ファンをつかみ損ねてしまいます。
そして、あまりに種類が多すぎる今のチケットのシステムもシンプルに整理すべき。つまり先々のことを考えれば、今のアマチュア体質を刷新し、協会内にチケッティングのプロを置かねばなりません」(田村氏)
エディー体制で歴史を変えたジャパン同様、協会にも組織改革が必要というわけだ。
(撮影/ヤナガワゴーッ!)