「チームを率いる森保(もりやす)監督の存在は大きい!」

Jリーグのチャンピオンシップ(CS)決勝の第1戦は広島が制した。

個人的には年間を通して一番強かったチーム、つまり年間勝ち点1位の広島をきちんと評価すべきだと思うし、できればCS決勝も広島に勝ってほしい。それが一番スッキリするし、納得感がある。

今季の広島はどのチームよりも攻守のバランスが取れ、安定した戦いぶりを見せた。年間勝ち点2位の浦和だって決して悪いシーズンではなかったけど、広島に比べると少し好不調の波があった。

2012年、13年の年間優勝に続いての今季の年間勝ち点1位。この広島の強さのベースにあるのは、補強のうまさと若手育成のうまさ。広島は資金力のあるチームじゃない。ここ数年は毎年のように主力選手が他チームに移籍している。それにもかかわらず、ピンポイント補強と若手の突き上げでそれを補っている。

今年もMF髙萩(現FCソウル)、FW石原(現浦和)が抜け、開幕前の時点では「優勝は難しいだろう」という予想が大勢を占めていた。

ところが、新加入したブラジル人FWドウグラスが得点ランキング2位(21点)とブレイク。彼は昨季J2に降格した徳島でもそんなにゴールを決めていた選手ではないし、シーズン序盤もそれほど目立っていなかった。そんな“微妙な選手”を我慢して使い続け、チームのサッカーになじませた。それがシーズン後半の爆発につながっている。よく目をつけたと思う。

また今季もFW浅野、MF野津田といった若手が伸びた。元々、下部組織の強化に力を入れており、育成には定評があるチーム。ユースからトップに昇格し、定着した選手はベテランの森﨑兄弟(浩司、和幸)を筆頭にたくさんいる。また、MF青山やMF清水など高卒の選手もちゃんと育てている印象だ。

“お山の大将”的な選手が見当たらない

そして、大きいのはチームを率いる森保(もりやす)監督の存在。12年に監督に就任すると、ペトロビッチ前監督(現浦和監督)の攻撃的サッカーに守備の意識を植えつけ、バランスの取れたチームをつくり上げた。

森保監督といえば、現役当時、オフトジャパンの一員として“ドーハの悲劇”を経験したひとり。ボランチとしてチーム全体のバランスを取る黒子役に徹していたのが印象に残っている。地味で目立たないんだけど、カズ、ラモス、柱谷ら中心選手は「森保がいると助かる」と口をそろえていた。それだけ周りが見え、チームのために自分が何をすべきかをわかっていた選手。

今の広島はそんな彼のスタイルがチームに浸透している。ずばぬけた選手はいなくても全員で攻めて全員で守る。選手同士、また選手と監督の間でうまく信頼関係を築けているのだろう。“お山の大将”的な選手は見当たらず、皆がチームのためにプレーできているように見える。チームの象徴であるFW(佐藤)寿人もスタメンから外されたり、途中交代させられたりすることがあるけど文句ひとつ言わないからね。

来季以降に関していえば、寿人の後継者不在やレンタル移籍のドウグラスの去就など不安要素がたくさんある。一気に優勝争いから遠ざかる可能性も否定できない。ただ、少なくとも今季は広島が一番王者にふさわしいチームじゃないかな。

(構成/渡辺達也)