日本代表での活躍ぶりとは、あまりに対照的だーー。
本田圭佑がACミランでベンチ暮らしを続けている。しかも出場する時は「試合終了間際の数分間」という状況が続いているのだ。
10月17日のトリノ戦(後半43分)、10月25日のサッスオーロ戦(後半44分)、10月28日のキエーボ戦(後半39分)、11月1日のラツィオ戦(後半36分)、11月7日のアタランタ戦(後半27分)、そして11月21日のユベントス戦(後半39分)という具合だ。
今月1日のイタリアカップ、クロトーネ戦でようやく今シーズン初先発しフル出場したがミハイロビッチ監督の評価は冷たいものだった。チャンスをもらったものの最後通牒とも言える手厳しいコメントを突きつけられている。
昨季10位に終わったミランは今季開幕前に大量補強を敢行。本田に居場所はないのではないかと囁(ささやか)れていた。それでも序盤戦は先発出場を続けていたが、チームの成績は上がらず、同時に本田の評価も下がっていった。
高校時代から本田を見てきたサッカーライターの杉山茂樹氏は現在の状態をこう語る。
「(日本が優勝した)2011年のアジア杯以降、ケガの影響もあり、特に身体的な強さが落ちています。象徴的なのがシュート。以前はもっと無理な体勢から迫力のある速いシュートを蹴っていました。
でも、今は踏ん張れないので、(コースに)置きにいくようなキックになっている。接触プレーもそう。昔は4人ぐらいの敵に囲まれてもなんとかボールをキープできていましたが、今、そんなシーンは見られません。W杯2次予選のように相手が弱ければごまかせますが、相手のレベルが高くなると肉体的に頑張りがきかないのでしょう」
最初に試合終了間際に出場したトリノ戦の前の2試合で本田は出番を1分たりとも与えられなかった。それを不満に思ったのか、日本の報道陣の前で「なんで出られなくなったかわからない」とミハイロビッチ監督の采配やチーム運営への批判を展開し波紋を呼んだ。
ミハイロビッチの起用法は、他選手への見せしめ
当然ながら、その発言は日本の報道を経由してイタリアにも伝わった。現地紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』のミラン番、マルコ・パソット記者は「あの批判こそ“連続ちょこっと出場”の理由」だと指摘する。
「ミハイロビッチは自分の仕事に口を挟まれるのが大嫌い。性格が激しく、自尊心も非常に強い。本田はミランにとってよかれと思って発言したのかもしれないが、直言をしていい監督と、いけない監督がいる」
しかし、逆鱗(げきりん)に触れたなら起用しなければいいはず。時間が短くても必ず出場させるのはなぜなのか。
「ミハイロビッチが言いたいのは、『なぜ使われないかわからないというなら使ってやる。でも、こういう使い方もあるということを忘れるな。決めるのは俺だ』ということ。90分間ベンチにいるより、数分間だけ使われるほうが選手にとっては過酷。精神的なダメージも大きく、屈辱的です」(パソット記者)
同じガゼッタ紙のパオロ・ファルコリン記者もこう語る。
「本田の批判は的を射ているとみんな薄々感じている。だから、ミハイロビッチは激怒したんです。(チームの伝説的OBである)マルディーニにならともかく、なんで本田なんかに言われなきゃいけないんだと。ミハイロビッチの起用法は個人的な報復と他の選手たちへの見せしめを兼ねたものでしょう」
恐ろしすぎる…。それが本当なら“飼い殺し”プラス“いじめ”だ。とっとと脱出すべきではないか。
『週刊プレイボーイ』50号では、さらに現地イタリアの記者やサッカーライターたちの証言から今後の本田を予測。注目の行方についてお読みいただきたい。
(取材協力/利根川晶子)